フラッシュモブとか、ヲタ芸とか、集団的行動について

先日の水戸ご当地アイドルの12時のステージを見て考えたことがある。地元のお祭りなのだから、ステージ前にいるのも多くが地元民。「水戸ご当地ちゃん漫遊記」の振り付け講座もやってから歌い出しても、なかなか会場のノリが悪い。水戸のファンは後方で盛り上がっているのだけど、前の方の地元民はなかなか振り付けをしてくれない。とはいえ、意外と子供はついてくる。激しく踊る男の子が一人いて、あー、初見のアイドルとかなんとか関係なしに、小さい子供ならなんとなく楽しい気分になって踊ってしまうのは自然なことなんだな、と思う。一方大人をそうさせるのはかなり難しい。




▲今年5/5、名古屋の銭湯でのBarbie Lipsのイベント。前に呼ばれた男の子が激しく踊っていた。



理想的なことを言えば、ここで大人まで含めてみんなノリノリで振りをしちゃうところまで持ってこれたらすごいと思う。大人の扱いと言えば、以前のりんご娘はとてもうまかった。ジジババまで含めて会場の空気を変えることができた。Negiccoは、ファンじゃない人間まで含めてラインダンスに持ち込むことができるだろうか、それができたら最高だ。水戸ご当地アイドル(仮)は、まだまだMCをうまくして、会場の空気をもっとコントロールできたら、すばらしいアイドルになるだろうと思った。これは結構ハードルの高い要求ですが。
なんにせよ、ここで自分が考えたのは、こうした人間が集う空間で、どうやって振舞いの規範を変えていくことができるだろうか、ということだ。アイドルの曲に合わせて手を振ったりすることが恥ずかしいという規範が支配するアウェーの空間を、踊っちゃえば楽しいからみんなで踊っちゃえ、むしろ踊らない方が場違いで恥ずかしい、という規範にどう持っていくのか。そう持っていけるアイドルは、強い。ここで思い出すのは、次の有名な動画である。




日本が変わるスイッチが入っている映像 - 裸の男とリーダーシップ




参考:サッカー国際大会開会式を盛り上げたサンフレッチェユース劇場



もちろんこれらの動画とアイドルステージを同じと見なすわけにはいかないが、いろいろな示唆を与えてくれるように思う。アイドルのパフォーマンスも、それを放っておいてしまうと、滑稽なものに映ってしまうことがある。アイドルが必死で歌い踊っているのに、聴衆がしらーっとしていたら、なんだかいたたまれない。そこでファンが、その滑稽さを引き受けて、全力でノッていく。その熱量が周囲に伝染していく、ということがありうる。ショッピングモール等でのアイドルイベントを見て意外に思うのは、そこで立ち止まった一般客が、それなりに楽しそうだということだ。アイドルの敷居はそんなに高くない。



一方、一般客がそう簡単にマネできない応援文化として、ヲタ芸がある。先日のサンリオピューロランドのイベントで、ズエリスト(Jewel Kissヲタ)がステージ後方の柱を回って帰ってくる、といういつもの集団的ヲタ芸(これはヲタ芸と言っていいだろう)をしていたが、アイドルファンならいざ知らず、そこにいきなり混ざっていける一般客はまずいないだろう。




▲これに一般客がその場で混じっていくのは難しいだろう



ところで、こうしたヲタ芸を見た時に、ふと「フラッシュモブ」との関係を考えたくなった。



フラッシュモブFlash mob)とは、インターネット、特にEメールを介して不特定多数の人間が公共の場に突如集合し、目的を達成すると即座に解散する行為。(Wikipediaより http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%A2%E3%83%96




BEST FLASH MOB (my opinion)



どちらも、ある一定の規模の集団が統率された動きを(周囲から見れば)いきなり始めて、「これは一体なんなの?」と思わせる。先述の、アイドルの振りをマネするのに比べても、その集団の行為自体がパフォーマンス性を帯びていて、それ自体が見せるものになっている。そして、それを前もって知らない人が、その場で途中参加することは難しい。フラッシュモブ動画を見ていると、それはそれは見事で素晴らしいパフォーマンスなのだが、たくさんのフラッシュモブ動画を見続けていると、次第に自分の中に冷めた気持ちも出てきてしまう。なんというか、これは内輪での自己満足的行為、自己顕示欲を満たす行為ではないか、という気分が出てくる。これはヲタ芸についてもそう言える。中に入ってしまえば楽しいのだが、外から見れば秩序を乱す行為にすら見られかねない(自分もズエリストとして、その辺の葛藤がないわけではない)。つまり、こうした行為は、ある空間にいる人びとを内と外に分断してしまう恐れがある。あるいはもちろん、内側の人が自己顕示欲を満たすとともに、そのパフォーマンスによって外側の人を満足させるというWin-Winの可能性もある。
いま結論をどうこう言えるほど考察はできていないが、以上のようなフラッシュモブ等の集団的行動について考えることで、アイドルファン文化の考察をより深めることができるかもしれない。



フラッシュモブズ ―儀礼と運動の交わるところ

フラッシュモブズ ―儀礼と運動の交わるところ

これは近いうちに読みたい。