私立恵比寿中学新曲「ザ・ティッシュ」感想

ザ・ティッシュ~とまらない青春~ / エビ中一週間

ザ・ティッシュ~とまらない青春~ / エビ中一週間


ヒャダインさんによるえび中の新曲「ザ・ティッシュ〜とまらない青春〜」の感想です。箇条書き的に。
●この曲は、花粉症の季節に、ティッシュに愛を告白する歌ということなのだが、花粉症ということでアイドルにくしゃみをさせるとか、ビデオ内でこよりを鼻に入れる映像を使えるとか、「へっくしょん」とか「わー」とか、鼻をつまみながらしゃべらせるとか、いろんな遊びができるので、モチーフの選択に成功しているように思える。
●「涙あふれるの」という歌詞は部分的に見れば他のJ-popとやらとなんら変わらないが、花粉症に対する生理的な反応である。この身体の問題で涙が出ていることを心情の発露としての涙に誤読させることの面白さ。
●鼻水という体液を扱っていることのエロさ。もう少し抽象化すれば、「体液を受け止めるものとしてのティッシュ」。当然卑猥なイメージが入る余地がある。さらにそのティッシュに二人称を適用する。ただジュニアアイドルのイメージビデオでバナナを使う、というほどにはあざとくはないように思う。
ティッシュに二人称を適用することで、擬似恋愛的視点で聞くことができる(ヲタ=ティッシュ)、とはいえそれはだいぶ馬鹿らしい。二人称を適用することで、「べッドの中も一緒だよ」という歌詞が成立する。ただ一方で、花粉症の時だけこんなにもティッシュが希求されるのだとしたら、それは花粉症の季節が終わればなくなるであろうつかの間の愛なのかもしれない、という点で、ヲタが自らをティッシュに重ね合わせることには悲哀が漂う。
(これはUstでは言わなかったが、欲望を受け止めるものとして、そしてまた割と簡単に捨てられるものとして、むしろヲタよりもアイドル自身の方がティッシュという比喩は似合わしいようにも思う。だいぶ悲しいことだが。)
●言葉遊びの面白さ。単に響きを楽しむこと。ティッシュティッシュ繰り返し言っているうちに変な感じになってくる(意味が離れてくる)。
「鼻→はなさないわ」「ティッシュ→コケティッシュ(なまめかしい・色っぽい)」のような言葉遊び。
●歌詞(詩)とアイドルというものの共通点について。
特に言葉遊びをしている歌詞は、それが何を意味しているか、何を表現しているかではなく、それそのものが何であるかが問題になってくるということ。
詩と同様にアイドルも、その表現したもの(意味)と、表現する主体(存在)の間を揺らいでいるという意味で同じなのではないか。
そういった意味でも、えび中の新曲はアイドルが歌う歌としてふさわしいように思われる。


いろいろ言ったけど、でも、ただ聞いて楽しい曲だよね、ということは一応確認しておきます。