チャンス!⇔危機

チャンス!(完全生産限定盤)

チャンス!(完全生産限定盤)

きらレボの展開を知らないので、これがアニメ作品とどのような関連性があるのか全く知らない状態での感想。何かストーリーとのつながりがあるのならご教授ください。
歌詞を見てみると気になる部分は3点である。


①チャチャ Chance!
擬音・擬態語は子供向けの曲には有効である。言語でありながら身体性を持っているために、純然たる記号性に慣れない子供に対しても十分に訴える言葉だからだ。この「チャチャチャンス!」があるだけでこの曲は成功だと言っていいし、僕の頭は破壊されそうになる。何かから解放される。


②キラキラ
「キラキラ」という歌詞が意味するところは何か?僕は「キラキラ」=アイドルだと解釈する。そんなに根拠はない。だけど「キラキラ」から僕はアイドルしか連想できないのだ。となると、この曲はアイドルがアイドルでなくなることを(も)歌っているのではないか?
Ⅰ「どれだけ変わっても 変わらず見ていてね キラキラのこの先の道を歩くわ あなたとね」
Ⅱ「どれだけ変わっても 代わりはいなくって キラキラのこの先の道を歩くの あなたよね」
Ⅲ「うっかり迷ったら しっかり抱きとめて キラキラのその先の道を照らして あなたがね」


Ⅰは例えば松浦亜弥のことを考えてみよう。もう松浦はそんなに以前ほど「キラキラ」じゃない。秋のライブを見ても、キラキラのその先をファンと進もうとしているように見えた。
Ⅱの解釈が難しい。代わりはいない、というのは実はヲタ自身のことか?かけがえのない存在を求めてアイドルヲタしている人間も、実は自分こそがかけがえのない存在と気づいて、ヲタを辞める、みたいな感じ?んー、ちょっときついか。「あなた」をアイドルともヲタともなんとでも取れてしまいそうだ。
Ⅲが示唆的だと思う。アイドルがアイドルでなくなった未来の道まで、ヲタはちゃんと指し示してくれ、と。アイドルの先も照らしてくれ、って今年のいろいろを経た今聞くと、切実である。


ところで悩むのは、「キラキラのこの先」というのが、アイドルを辞めた後のことなのか、アイドルになって歩む道のことなのかどちらにも読めることだ。上記ではアイドルを辞めた後と解釈して論を進めたが、おそらくこれはあまり一般的な読み方ではない。一般的には「アイドルになってどれだけ変わっても変わらず見ていてね」「今日までの毎日(一般人としての日常)にさよならを告げてアイドルになっていく」という歌だという解釈でいいのだと思う。ただ、僕がどうしてもアイドルを辞めた後のことをも歌っているんではないかと疑ってしまうのは、③の特徴ゆえである。

③「キ」の多用
歌詞を見ると、「キ」がおそらく意図的に多く使われているであろうことに気づく。
「キラキラ」はもちろん、「ツキまくり」「キセキに切り抜けて」「キョウテキ」「劇的」「ステキ」「ホウセキ」「ムテキの勢いで」「ツヨキなその意気で」など。
ここから深読みです。「キセキ」「キョウテキ」は「キ」を二つ使っている。「劇的」も「ゲキテキ」と二つ使う。「ステキ」と「ホウセキ」、「ムテキ」と「ツヨキ」は歌詞上、上下に並ぶ形、「キ」が二つセットで並んでいる。
これは、「チャンス!⇔危機」という対比ではないか、という読み込みをしたくなる。


チャンスを生かしてアイドルはキラキラな世界で生きる。けれども同時に目に見えない危機にいつも晒されている。だから、ファンは、ヲタは、アイドルが進むべき道、またアイドルがアイドルでなくなった先のことも考えてくれ、っていう、アイドル存在の危さまで踏み込んだ歌なんだ、って読み込みすぎですか。そう思った方はチャチャ入れてください。