顔を写さない少女写真集の意味
昨年あたりから、顔を写さない写真集の出版が目立つように思われる。
最も有名なのは、そしてその流れを作ったように思われるのは以下の写真集である。
『スクールガール・コンプレックス』青山裕企(2010/7)イースト・プレス
スクールガール・コンプレックス SCHOOLGIRL COMPLEX
- 作者: 青山裕企
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2010/07/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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その後、同様のコンセプトで作られた写真集がいくつも出版されることになる。以下参照。(ただし、全ての商品の中身をチェックしているわけではないので、顔が写っているものもあるのかもしれない)
『思春期』谷郁雄、青山裕企(2010/10)ピエブックス
- 作者: 谷郁雄,青山裕企
- 出版社/メーカー: ピエブックス
- 発売日: 2010/10/20
- メディア: 単行本
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- 作者: 有田ハンタ
- 出版社/メーカー: オークラ出版
- 発売日: 2010/12/25
- メディア: 単行本
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- 作者: アスペクト,ビジネスアスキー=
- 出版社/メーカー: アスペクト
- 発売日: 2011/01/22
- メディア: 単行本
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- 作者: 青山裕企
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2011/01/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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スクールガール・コンプレックス──放課後── SCHOOLGIRL COMPLEX 2
- 作者: 青山裕企
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2011/04/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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そこから派生する流れとして、
『OFFICELADY COMPLEX』(2011/2)KKベストセラーズ
のようなオフィスレディーに照準したものや、
『Pet’s Eye』田村浩章(2010/11)マイウェイ出版
『Pet’s Eye2 Past & Present』田村浩章(2011/4)マイウェイ出版
のような、ペットからの視線をなぞったものがある。
Amazon.co.jp限定 生写真付き OFFICELADY COMPLEX
- 出版社/メーカー: KKベストセラーズ
- 発売日: 2011/02/19
- メディア: 単行本
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- 作者: 田村浩章
- 出版社/メーカー: マイウェイ出版
- 発売日: 2010/11/30
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- 作者: 田村浩章
- 出版社/メーカー: マイウェイ出版
- 発売日: 2011/04/15
- メディア: ムック
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また、少し昔のもので、
『マスク☆ムスメ』天野いさお(2007/4)太田出版
というマスクをした女性の写真集や、
『ケガドル!』小久保洋(2007/7)ワニブックス
という包帯や眼帯をした女性の写真集もある。ただ『ケガドル!』はグラビアアイドルをモデルにしているため、「顔を出さない」という感じではない。
- 作者: 天野いさお
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2007/04
- メディア: 単行本
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- 作者: 小久保洋
- 出版社/メーカー: ワニブックス
- 発売日: 2007/07/26
- メディア: 大型本
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以上のような顔を出さない写真集を考えるときに2つの側面があるかもしれない。一つはフェティッシュな欲望、「パーツ萌え」とでも言ってよいようなものである。もう一つは、妄想の余地を残すということである。後者について少し掘り下げたい。
顔が写っている写真では、その写っている顔を他の顔に読み替えていくことは容易ではない。しかしそもそも顔が写っていなければ、どんな顔をも想像することができる。
そこで思い出すのは、伊集院光とラジオリスナーによって創りあげられた架空のアイドル「芳賀ゆい」である。これはラジオ番組で伊集院光が、「はがゆい」という言葉がアイドルの名前みたいだと言ったことをきっかけとして、リスナーからの投稿によって設定を追加しながら架空のアイドル像を創りあげていったものだ。
顔を隠しながら握手会や写真集を出し、最終的に海外留学するという設定により企画が終了した。
『う・そ・つ・き―芳賀ゆい写真集』斉藤清貴(1990/9)ニッポン放送出版
- 作者: 斉藤清貴
- 出版社/メーカー: ニッポン放送出版
- 発売日: 1990/09
- メディア: 大型本
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さて、現代の写真集の話に戻ろう。紹介してきたように、『スクールガール・コンプレックス』をはじめとして、思春期の少女を被写体とした写真集が多いのはなぜか。ひとつにはなぜ少年でなく少女なのか、ひとつにはなぜ思春期という時期なのか、ということが問題である。
少年でなく少女である意味は、過去に同人誌でも書いたことがあるが、少女の方が様々な読み込み方ができるという点で、想像の余地が広いということが言えるかもしれない。単純にかわいいものとして、あるいは性的なものとして、あるいは美そのものとして。
そしてなぜ思春期なのか、という問題について。
我々は、写真集という虚構において、自らが現実で手に入れられない、不可能なものを求めているとしたら、その不可能性の一つは、自らの理想像のことである。その不可能なものは、自分の頭の中にある。そしてもう一つの不可能性は、自分の過去である。過ぎ去ったものは、もう無いという点で、今現実において手にすることができない。
多くの人は自分が輝いていた(かもしれない)、生命力豊かであった思春期(別にこれは実際にそうであったかどうかは問わない)を求める気持ちがあるのではないか。
つまり、顔を出さない少女写真集は、理想像としての少女と、過ぎ去った輝かしい過去、という2つの不可能性を満たすであろうものとして一定の需要があるのではないかと思う。
そしてそれは女性アイドルに求められることとも、おそらく被るのである。