TIF感想

TIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)2014の2日目に行ってきました。日焼けで腕が痛いです。当日夜にツイートした内容を中心に、感想をまとめておきます。

チラシをもらったアイドルは以下の通り。NA-NA、Re-2、メグリアイ、強がりセンセーション、はちきんガールズベースボールガールズ、姫宮こもも、水戸ご当地アイドル(仮)。スマイルガーデン付近と、物販会場付近は他にもどこの馬の骨か分からないアイドルがいっぱいビラを配っていた。ランドセル背負ってた二人組が強烈な雰囲気を漂わせていたが、名前分からず。(ちなみにこの「どこの馬の骨か分からない」というツイートでプチ炎上を起こしましたけど、これってここに名前を挙げたアイドルを「どこの馬の骨」って書いてるように誤解を生む表現だったことが問題だったと思うので、その点はすみません。表現直しました。)
アイドルによってチラシは様々だったが、チラシの裏にTIFのタイムテーブルを印刷していた水戸ご当地のやり方がうまかった。とにかくビラ配るアイドルが多くて、その多くはTIFに参加できない弱小アイドルかデビュー前のアイドルなのだけど、そこらへんに「アイドル」が歩き回っていることに我々も全く動じなくなっている。


当日の行動記録。ラジオ体操→おはがーるふわわ→小池美由MC→GALETTe MC→JK21おやゆびプリンセス小池美由Negicco→DLH→水戸ご当地アイドル(仮)→GALLETe→LinQ→水戸MC→Rev.from DVL→ドリ5→TPD→リンダ3世→スルースキルズ→AeLL.。かなり走った。特にフェスティバルステージとスマイルガーデンの間は何往復もすることになった。


初っ端のラジオ体操。これは本当にすばらしかった。「夏の朝にラジオ体操を行う」という非常に健全な行為だが、それゆえヲタの方で想像力を働かせてその場に合ったものとして最高に盛り上げてしまう。もちろんラジオ体操がほぼ全ての人に知られたものであるという「分かりやすさ」も大事。(ちなみにいまのラジオ体操は1951年から続くものだそうで、全国に放送され、また朝に子供を集めて行うラジオ体操の会も全国で開かれているようだ。)

ラジオ体操のクライマックスのジャンプのところは、当然ファンの推しジャンプのようになる。示し合せなくてもこうなるくらいの共通了解みたいなものがある。ハロヲタとしては、マジヲ体操を思い出さずにはいられない。

以上を考えれば、ラジオ体操をやろうという選択はとてもすばらしかった。今考えれば当然に思えるが、実際にヲタがそこでアイドルファンなりの「ラジオ体操」を即興でやれてしまうことは感動的ですらあった。ステージ上のアイドルが笑い転げていたように、そこでは我々が演者になった。
批評誌『アイドル領域Vol.6』でも扱った「観客の演者化」は、他にもいろいろな場面で目にすることができた。特にオープンスペースでのイベントの場合、アイドルを応援するファン、を見る周りの一般客、という構図ができあがることが多い。

アイドル領域Vol.6

アイドル領域Vol.6



おはガールふわわ。お披露目はTIFが初めてとのこと。曲中にけん玉をやるという演出は面白い。てゆうか、ちゃんとうまい。こういうのを見ると、アイドルの幅の広さというか、「芸であれば何でもあり」という自由度の高さを感じる。この点については、『幻の近代アイドル史』も参照のこと。


「ストリートけん玉」って、ストリートをつければカッコいい響きになるってことなんだと思うけど、ベーゴマを初めとして、時代遅れになったおもちゃのリバイバルってのは、おもちゃ業界的にはすごく大事なことなんだろーなーと思って見ていました。

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INFO CENTRE、小池美由MC。普段のイベントは割と同じようなパターンでしゃべるけど、芸人がいじるがゆえにアドリブ的な対応が求められるこの場面でも圧倒的に面白かった。小池の、「飲酒運転できる歳なの」には笑った。とにかく、すべらせない技術が卓越している。それから、後述するが、表情の作り方が興味深い。


フェスティバルステージのJK21、きゅーりなさん(田中梨奈)の慈愛に満ちた表情が、会場の全ての人のどうしようもなさを赦した。表情がそのままその肉体に宿る精神の美しさを示した。この場合、「本当」は表層に貼り付いているのだった。
客席に向けてハートマークを作る時のきゅーりなさんの表情は、本当に全ての客の煩悩を引き受けているような、悟り切った慈愛の表情だった。こうした言明は、全く他人に伝わらない、極めて個人的な(宗教的)体験の告白だが、アイドルファンなら、皆似たような経験をどこかでしているかもしれない。


フェスティバルステージ、真夏でも除雪魂、おやゆびプリンセス。代表曲で、ファンが何て叫んでるのか知らなかったのだが、ファンがスケブで示してくれたのでようやく「俺らはラッセルボーイズ」って叫んでいるのを知った。この曲は終盤に長い口上も入る。「洗濯機」も起きる。


TIFはそれぞれのアイドルファン文化を披露するファンの晴れ舞台でもある(ファンの演者化)が、一方で「一見さんお断り」のようにならないように、「ここではこう言います」「こうして楽しんで下さい」が分かるように常連ファンが気遣いをするというのがよく見られる。これがとても助かるし楽しめる。一度聞いただけでは分かりづらいコールや口上を、スケッチブックやら、もっと大きい模造紙に書いて、邪魔にならない位置に掲げる、ということを常連ファンが行うことが多い。北海道のフルーティーとか、水戸ご当地アイドル(仮)とか、他おそらくいろいろなアイドルのファンがやっているのだろう。
しかし一方で問題なのは「ありがとうございました」問題だ。そのアイドルの出番が終わった時に、トップヲタらしき人が「ありがとうございました」と叫ぶことがよくある。一見美しく非難しづらい行為だが、アイドルへの愛よりも、そのヲタの自己顕示欲があふれてやしないか、と感じる時もたまにある。これは「ウリャオイ」の「ウリャ問題」と言い換えてもよい。


スカイステージ、小池美由。一つ感じたのは、小池美由は「性欲」を巧みに回避している気がするということだが、どうだろうか、実際のファンは。
小池の、初見のアイドルファンに対するアピール力はすごい。初見でちゃんと楽しませて帰す。こないだ書いた記事も参考のこと。(小池美由の距離感 http://d.hatena.ne.jp/onoya/20140713


ホットステージ、Negicco。「圧倒的なスタイル」で、後方の観客まで広い範囲まで巻き込んでのラインダンス。アイドルがハブになって人をまとめていく象徴例。自分は全然ノリのいい方ではないのだが、自然と肩組んでやってしまった。6年もやってる曲だから、みんな分かっている。
この「圧倒的なスタイル」のように、一曲でアイドルファンをつかむ曲を持っているグループは、こうしたイベントでは強いよね。Negiccoの次に出演したドロシーで言えば「デモサヨナラ」だけど、ドロシーは歌もダンスももうすっかり貫禄があって、それなしでも全く飽きさせなかったです。


ドールファクトリー、水戸ご当地アイドル(仮)。水戸はデビュー直後からチェックしている好きなグループですが、もう少しパンチがほしいというようなことを当日昼にツイートしたけど、もしかしたら必要なのは観客の一体感だったのかもしれない。自分は水戸ヲタがいないエリアにいたのだ。
水戸ご当地だったら、ちゃんとそれなりのコールして、曲終わりに印籠を出されたら土下座しないといけない。(初見のアイドルファンが混じっているので)土下座が観客一体となって決まらないから、自分の中のもやもやが残っただけかもしれない。水戸のパフォーマンスは、ふわっとしている雰囲気が好きなのだった。バッキバキに踊る必要なし。
で、水戸ご当地センターのまりなっぴですが、美しいのはもちろんですが、センター的雰囲気を持っている、と改めて感じた。悪い意味でなく、グループのセンターは空虚な方がいい。空虚というのは、ファンの視線を受け入れるだけの器の大きさがある、というようなことです。
すごいざっくりですが、安倍なつみ前田敦子百田夏菜子矢島舞美、チームしゃちほこの秋本帆華あたりの系譜を感じるんですね。確固たる意志、みたいのじゃなくて、器の大きさ(逆に言えば天然)みたいなところですかね。ちょっと適当なんで、あんまりここ突っ込まないで下さい。


ドールファクトリー、GALETTe。「Brand-New Style」の「HA‐‐‐‐」ってサビ前の高音部分で、歌声から意味がきれいに剥がれ落ちていく感覚を得ることができる。これは解放感。
参考:「アイドルは「表意」せず、「憑依する」」http://d.hatena.ne.jp/onoya/20090315/1237126654
(我ながら、この記事、名文だと思います。ぜひ読んでみてください。)
で、GALETTeはののこさんがいい。笑顔以外に意図的にしている表情がいい。困り顔、りりしい顔、ゆがませた顔。DLHの富永美杜さんのびっくり顏にもハッとさせられたが、小池美由の笑顔も含め、ちゃんと演じている表情は見ていて飽きない。それはわざとらしさというマイナスにならない。ある程度の距離からステージ上の演者を見る時、観客からは、微細な表情の変化は感じにくい。だから当然演者は、1対1の対面のコミュニケーションよりも過剰に表情を作ることになる。まさに女優。
GALETTe、基本的にののこさんをずっと見ているのは、表情の予想がつかないから。それは気持ちをざわつかせる。古森さんの顔もすごい好きなんだけど、「こいつにはだまされないぞ!」とつい思ってしまうのだった(←これすごいほめてます)。その悪女感がいい。
フェスティバルステージ、LinQは、「チャイムが終われば」の「いーこーうー」のところの振付けが最高にいい。最後の方でビーチボールを客席に打ち込んでたけど、けっこう近くに落ちました。


スマイルガーデン、Rev.from DVL。遠巻きに見たので、あれがかんなさんだ、という感じで終わる。dream5、誰を推すと言われたらほとんどネタを通り越してアキラくんですね。かっこいい。あと、何度も言いますが、ちゃんと腋の処理もしていました。


ドールファクトリーのTPDは終わり間際しか見られなかった。リンダ3世、昨年はステージ上にメンバー以外のブラジル人が立っていたが、今回はメンバーの家族らしき女性がヲタと一緒に応援していて大盛り上がりで、ヲタを引き連れて回ってました。
リンダ3世のメンバーでは、さくらさんに目が行くのですが、これは明らかに運動神経が悪そうで、昨年は振りの通りに体を動かそうというけなげな感じが印象に残っていたからですが、今年は少しうまくなってました。
エンジョイスタジアム、スルースキルズも終わり間際のみ。このグループの罵っていいというコンセプトについてはしっかりと検討をしたいので、一回しっかり見ておきたかった。またの機会にじっくり見たいと思います。


ドールファクトリー、AeLL.。いよいよこのグループもあと少しで活動休止ですね。曲もいいし歌声もいい、何より醸し出す雰囲気がとても品がよいと思いました。そしてファンの盛り上がり(応援文化)もすごくて、この4年でファンが濃密な歴史を紡いできたことを感じさせました。
TIFの面白さとして、いろいろなアイドルのファンが、それぞれどんな応援文化を紡ぎ、アイドルメンバーと信頼関係を築いてきたかということを、(アイドル、ファン双方の)短いパフォーマンスの中でも感じることができるということがある。AeLL.にも強くそれを感じました。


疲れてグランドフィナーレを見ずに帰宅。TIF、純粋なアイドルヲタにしてくれるし、それでいていろいろなことを深く考えさせてもくれる。素晴らしいイベントでした。マナーの問題は話題に出てますが、そこもしっかり議論の上、毎年開催してもらえるといいなーと思います。