5/17沼津、全日本アイドル選手権

さて、いまさらながら、一月前の5月17日に沼津で行われた全日本アイドル選手権の感想を。
公式サイトはこちら→http://www.alljapan-idol.jp/


このイベント、運営サイドからすれば集客大失敗のイベントで、まあ1週間前になってもまともにタイムテーブルも出てこないようでは、と思っていた通りの客入りでした。これが首都圏ならいざ知らず、新幹線を使わなければ首都圏から2時間以上は確実にかかる場所でのイベントで、詳細が直前まで分からないのはきつい。
当日の電車遅延もいろいろあって、自分が着いたのは開演から1時間以上経過した12時過ぎ。チケットもぎりのところでもなんだか手際が悪かった。よく言えば手作り感というか、まあ、文化祭感というか。
中に入ると、入れようと思えば5000人くらい(もっとかも)は優にいけちゃうような大ホール。それをいくつかのスペースに分けていた。メインステージの中心から花道が伸び、その先にはなぜかプロレスのリングが。ホール後方にはチェキ撮影のためのスペースや、カフェ(といってもテーブルが並べてあるだけ)スペースがある。



▲カフェスペースからメインステージを望む。とても広いホール。



ちなみに隣のホールは入場無料で、地域の人々の歌やダンスなどの披露の場になっており、いろいろな出店もあった。まさに文化祭のノリ。
メインステージに話を戻すと、自分が到着した時点で、メインステージ目当てに集まっていた人は60名程度か。地元の人、アイドルファン、カメコさん。

お目当ては水戸ご当地アイドル(仮)とLe Siana。まずは水戸のパフォーマンスから。
水戸も1年半の間にメンバーが結構入れ替わってしまった。歌唱力とかダンスに際立ったものはないが、曲がよいのと、メンバーのほんわかした雰囲気がいい。



水戸ご当地アイドル(仮)



▲まりなっぴ(左)


水戸っぽ(水戸のヲタ)が少なく、というのも水戸からは4、5時間はかかるので仕方ないのだが、完全にアウェー状態でのパフォーマンス。入るべきところでのメンバーコールが入らない、水戸ご当地ちゃん漫遊記の最後の土下座をやらない、という状況はメンバーたちにとってやりづらそうだったし、それはメンバーにメンタル的な影響も与えるだろう。こういう現場を見ると、アイドルがファンとの相互関係で成立していることを再認識できる。その意味で、然るべきファンの応援文化は必要だと言える。
その後、なぜかプロレスリングに移動しての変顔対決というのがあり、これは猛烈にくだらなかった。しかし悪くはなかった。



▲変顔対決



入場の時にコイン(というかいろんな色のチップ)を2枚もらうのだが、それはチェキ撮影とかカフェに使用できる。自分は1枚を水戸メンバーとのチェキに使った。1枚を後でカフェで使うことになった。

奈良のアイドルLe Siana。こちらはしっかり踊る。美しく踊るというよりは、元気に、強く踊る。そのエネルギーが圧力となってこちらの身に迫ってくる。とてもよい。



▲Le Siana、イントロのシーン。



さて、メインステージとリング以外の、要はホール後方において展開していた各企画は、決して機能していたとは言えない。チェキは、アイドルによってはあんまり撮るファンがいないもんだから、持ち時間が終わる前にアイドルがその場を離れてしまうこともあったし、記者会見的なコーナーでは、メインステージの音が大きすぎて、そこでの会話がうまく通らなかったり、そしてカフェはアイドルが飲み物を注ぐのだけど、別に会話が楽しめるほどの一定の時間をとるでもなく、なんとなく飲み物を注いでいるという感じであって(さらには並べられたテーブルの上に飲み残しのカップが多数置かれていて、見栄えのいいものではなかった)、一言で言えば、それぞれの企画があまり「立っていなかった」ということだ。それは逆の言い方をすれば、ファンとアイドルがぐだぐだの雰囲気を楽しめる場でもあったということで、その意味では現場に慣れたアイドルファンにとっては天国のような現場であったかもしれない。なにしろ入場者が少なくて、ビラを配りたいアイドルがなんとなく手持無沙汰になってしまう様子すら見られたのだ。



水戸ご当地アイドル(仮)、撮影ブースにて。



というわけで、イベントとしては失敗気味であったし、一部のアイドルにとってはなかなか難しいイベントになってしまったかもしれない。自分が感じた一番の問題は、隣のホールで行われた無料の地域イベントと、有料のアイドルイベントがうまく橋渡しできていなかったのではないかということだ。地元民が気軽にワイワイとホールに集まってくる雰囲気というのは正直なかった。もしかしたら沼津周辺の住民に安くチケットをまわすという試みが(もしされたとしても十分には)なされなかったのかもしれない。本来は地方のショッピングモールや祭りで繰り広げられる地域住民とアイドルとファンの邂逅が、このイベントではうまくいっていないという印象を受けた。主催者側は、それぞれのイベントを隣り合うホールで開催した以上、その混ざり合いをある程度意図していたはずなのに。(自分は15時半までしか会場にいなかったから、その後で何か違った展開になったのかは知らない。その辺のところを知っている方がいたら教えて下さい。)


他に気になったアイドルについても記しておこう。勉強不足で知らなかったアイドルとして「スルースキルズ」というグループを知った。「罵っていいアイドル」というコンセプトは斬新だが、そこにも作法というのがあるのだろうな、と推測できる。つまり、いくら罵っていいという設定のアイドルであろうと、結局のところ好き放題罵ることはできないだろう。この問題は、日を改めて考えていきたい。


当日の他の現場のイベントも含め、地方アイドルの出演するイベントの集客力に陰りがあるのではないかという問題提起もツイッター上で見ることが出来た。これだけ地方アイドルが乱立すれば、どの現場も盛況であるということは考えづらく、なかなか難しい問題である。
しかしそれよりも、この閑散とした現場において自分が気になってしまったのは、「地方アイドルが何をゴールにするか」という問題である。5年前であれば、アイドルが途中でやめる常套句は、「学業に専念するため」というような、(真偽はともあれ)学生という立場を利用したものであったが、いまや就職のためとか、就職活動のためといったものも珍しくない。アイドルが長寿化、あるいは多様化した結果の高年齢化のせいとも言える。基本的には、アイドルと学業は両立可能だが、アイドル稼業と別の仕事は両立不可能である。
アイドルになる敷居が低くなり(それは「アイドルのアマチュア化」と言ってもいいだろう)、またアイドルを比較的長く続けることが可能となった現在、アイドル業を、人気が無くなってきたから(儲からないから)というようなやむにやまれぬ理由でやめることが相対的に少なくなってきたと言える。そもそも、地方アイドルが獲得できる人気の規模はたかが知れている。だから、アイドルを続けるか辞めるかという選択も、アイドル自身に委ねられてきていると言える。高校を卒業するタイミング、あるいは大学卒業を前にしてその先の身の振り方を考えるようになった時、いつまでアイドルを続けるかということを否が応でも考えざるを得ないだろう。実際には、メジャーなアイドルになって将来的に芸能人として生きていくことを現実的な目標として設定できる地方アイドルはけっして多くないだろうという現状がある。
もちろん、地方アイドルの魅力はその目的の多様性にあるとも言える。メジャーになりたいという野心を抱いたアイドルもいれば、地域活性化という目的を全うしようと健気に活動しているアイドルもいれば、部活のノリで、人前でパフォーマンスをする楽しさを青春時代に味わえればそれで十分だと思うアイドルもいるだろう。しかしいずれにしても、地方アイドルのまま、人生を生き続けるというあり方はいまのところ成り立たない。(地方のテレビ局を中心に活躍する芸人のように、生き残る道もないとは言えないだろうが。)


だから、ぼくは20歳を超えた地方アイドルを見ると、本当に切なくなってしまうと同時に、なんだかもう感謝の念を感じずにはいられない。それが単なる彼女自身のモラトリアムだったとしても、アイドルをしようというその選択が愛しいのだ。週末ごとに地元で、あるいは首都圏までわざわざ出てきたり、他地域にまで遠征して、そんなに多いわけでもないファンや他の地域のアイドルファンの前でパフォーマンスをする。そこには楽しさも、時にむなしさもあるかもしれない。それでもアイドルをする。アイドルを続ける。彼女たちの将来を考えた時に、いつまでもアイドルやってらんないでしょ、と思いながらも、アイドルファンの性で、いつまでもアイドルでいてほしいと願う。そんな切なさがある。


何を言いたいかというと、水戸ご当地のまりなっぴ頑張れ。