ヲタは奴隷でも王様でもない

ライブ中に村上愛のことを想った。前の日記では事務所のことばかり偏って書いてしまったけれども、村上自身の精神状態ってのは。もし今回の件で村上がこの世界でやっていくことが出来ない状態になってしまったのだとしたら、今回の処置ってのは適切だと判断することも出来るんだろう。「脱退しました」でなく、「脱退します」であったら、なんらか彼女本人がその弁明をしなければならない。また余計な嘘で自分を苦しめなければならないんだろうから。
真実を知りたいとは思わない。けれど。アイドルがヲタの欲望を煽ることで存在できていることは確かだが、ヲタがそれにあぐらをかいて、アイドルをどう消費しようが勝手であると思うことはしていけないと思うのだ。STKとかどうしようもないヲタとか、言っても聞かない奴らがいるのは分かるが、それでもアイドルを滅ぼさないために何らか声をあげなきゃいけないんだと思う。
昔あるデパートでバイトをしたときに、バックヤードに「お客様は王様」みたいなことがかいてあったのを覚えている。それは確かにそうだ。だけど、接客をしていて思ったのは、デパート側が「お客様は王様です」と客を迎えたとしても、それをそのままに受け取って王様面して来る客がいるとするなら、そいつは人間としては最低だ、ということ。
アイドルにとってファン・ヲタは自分を存在させてくれるそれはそれは大切な人だろう。けれど、じゃあヲタが勝手やっていいのか、そんなはずはない。そういう当たり前のことが崩れていく恐怖。
しかし一方で、STKがいなくなるということはありえないだろうとも思う。これからも村上のようなことは起こるだろう。一つの想像として、次のことが考えられる。ひとしきりそんな事件が続いた後で、アイドルは滅びる。アイドルが3次元から2次元に完全に押し込められる、90年代初頭に起こったように。そしてほとぼりが冷めた頃にまた人間のアイドルが復活するみたいな循環史観。
また別の可能性としては、割り切ること。たとえば、久住や道重や辻のような、虚構寄りのアイドルを創っていくことで、事務所そのものがアイドルとはプロレスのようなものである、と公言してしまう作戦。あくまでメディアなど限られた場でのみアイドルが生息しているものとしていき、プライベートを問わないファンしか相手にしない。(あるいは、事務所の誘導の下で、ハローのアイドルを全員レズビアンにしてしまう作戦もあるが。)

厳しいな、アイドル世界。でも、そんな厳しい世界で必死になってなきゃ、みんなが応援するようなアイドルにはなれないってことも事実なんだなあ。
ステージ上の道重さゆみは、必死で、うそくさくて、かわいかった。「きゃはっきゃはっ」って全部を壊してくれます、もやもや、全部なかったようにしてくれます。こんな日記を書いてしまったけれど、僕はライブは本当に思う存分に楽しめたのだ。至福だった。エネルギーをもらった。
今が大事なんだってこと、はかなく美しいものを見ると、実感できます。アイドルははかなく美しいものです。完全な虚構は、はかなく美しいものを愛でる倫理を剥奪します。それじゃダメなんです。僕らも、アイドルも、危うい状況でお互いに依存している。そんな危うさを自覚した上で生きていかなきゃと思う。