The 歌詞 2006 〜ハロプロソング 歌詞グランプリ〜

http://d.hatena.ne.jp/narit/20061203
締め切りすぎたらしいですが書いてみます。

第5位 Mystery of Life
「わたしは わたしが わからない!
わからないから楽しいのよ
わからないから生きてゆくの
教えないで 教えないで 自分で探すから」

あのミュージカルの中で、こんな歌詞がベタに僕の中に入ってきた。
「実存(現実)的ベタ視線」(図中の視線①)とでも言おうか。
僕らはあのミュージカルの中で、「人間」とされたアイドルと向き合い、そして自らのヲタとしてのあり方も問われた。それを象徴するかのような1曲。


第4位 歩いてる
http://d.hatena.ne.jp/onoya/20061115 に書いたことをもう一度。
「歩いてる」はラブマ以降続く娘。楽曲の思想を受け継ぐものである。
①倫理的な言葉をかなり直接的に使ってくること(「正義」「平和」とか)
②歌詞の作りが下手に見えること
正直言って、僕は「歩いてる」の歌詞の全体的なつながりがよく分からない。なんか深いこと言ってそうで、多分言ってない、みたいな歌詞が並んでいる。僕は、この曲で言いたいことは「正義」「平和」でおしまいだと思っている。倫理は論理的に説明できない。だから、あえてつながりのよく分からない歌詞構造にすることによって歌詞の中に倫理を織り込んでいく、というのが昔からのつんくの技術だ、というのが持論である。
「いつの時代も 正義がある」
「切に平和 願って」
ベタに消費したくない。SMAPみたいに消費したくない。これはメタ的に見るべき歌詞である。なんだか「正義」とか「平和」とかスケールがでかいぞ、と笑っておけばいいのだ。そうして笑っておけば、本当に平和になる、かも、しれない。ないか。


第3位 青空がいつまでも続くような未来であれ!
「HOW DO YOU LIKE JAPAN?」でもよかったのだが、以下の歌詞が印象に残るので。
「長い 長い この地球に歴史がある 少しだけど この私も 一部だわ」
「地球」が地球を表すのか「ハロプロ」を表すのかよくわからないけど、ライブ空間でこの曲を聞いたら、その空間内ではベタに没入するしかない。「ハロプロ」の(それなりに)長い歴史の中で自分(アイドル・ヲタ自身)もその一部であると。ライブ空間でのその感覚って、その瞬間はライブ空間こそがこの世の全てなんだから、「地球」って言葉を使っても違和感がないくらいには僕らはトリップしちゃっている。
そんな祭の場の陶酔から、共同体の倫理へ架橋するするようなこと、この曲はできるんじゃないのかなあ。


第2位 レインボーピンク
楽曲大賞では1位にしたけれども、イメージに負うところが大きかったので、歌詞では2位とします。
特に注目したい歌詞は以下。

①「ヒャクパ ピンク色で スモモも桃も桃 食べちゃってよ〜」「きゃぁあぁぁぁああぁぁ」
②「桃色の 桃色の 青春ってロマンティック 夢見がちでキャキャッキャしちゃう」

http://d.hatena.ne.jp/onoya/20060322/1143052425 で書いたのだが、萌えの感覚とナ行・マ行・パ行(・ラ行)の親和性。実際の表象としてのピンク(桃)色から受ける我々のイメージと、「ピンク」「もも」という言葉の響きはなんとマッチしていることか。音声学(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E9%9F%B3%E5%A3%B0%E5%AD%97%E6%AF%8D)をやればなぜ「ナ・マ・パ」あたりが萌えなのかわかるのかもしれないが、今のところ分かるのはいずれも唇と唇、歯茎と舌を密着させて発音をするということである。そして「ナ・マ」は鼻音であると。
①では「パ・ピ・モモモモモモモモ」と萌えておいて「食べちゃって」の「ちゃ」、そして「きゃぁあ」ではじけるという展開。②では「もも・もも・ろま・めみ」と萌えておいて「キャキャッキャ」とはっちゃける、と極めて計算された歌詞のつくりをしているということがわかる。恐るべし、つんくである。
イメージで萌え、音で萌える。やはり史上最大の萌え曲だと言えるだろう。


第1位 さよなら SEE YOU AGAIN アディオス BYE BYE チャッチャ!
歌詞を全部書いてしまいたい。ライブの終わりを飾るには最高の曲だ。
「赤くて緑で黄色いですね」と会場の描写をしてそれを「至福の三原色」とする。ヲタヲタしさ満開の色とりどりを「至福の三原色」と!…うれしいやらはずかしいやらだな。
「100年後もきっと 素敵な地球 素敵な私たち」って、安住しすぎだけど、その瞬間が永遠という言い方ができるなら、それは真である。
田中の「日本全国遠路はるばる遠い場所からもお越しくださいました」というセリフはほんとにヲタの世界を肯定してくれていて興味深い。こういう内輪ネタってのは、素直に喜んでしまうところはある。辻がMCで「いつもきてくれている皆さん」って言ってくれるのがうれしいのと同じことだ。
「あの街 この町 楽しいですね」
僕は今年初めて富山に行き、奈良に行き、神戸に行った。正直言って、その街のことなんか見ちゃいないのだ。一度だけ石川の時に兼六園行ったくらいなのだ。だけど、「あの街 この町」が楽しいのだ。行くという「形式」に依存しているのは否めないけれど、現場で僕はさまざまに「意味」を受け取っているから、いいのだ。今年はなんだかんだで参戦が多くて、幸せだった。


特別賞 わ〜MERRYピンXmas!
楽曲大賞では来年扱いでしたが、どうしてもこれを取り上げざるをえない。
今CDで聞いてたら、ライブの時よりもっと殴りたくなった。大好きです。
やはりマ行の力を感じる。
例えば「街中みんなほら いちゃいちゃしてる」でも、「ま・み」のあと「ちゃ・ちゃ」と解放するようなつくり。
「ドキ胸キュンボッキュン」も、「むね」のあと「キュン・キュン」という展開。
計算され尽くしている。
「イヤン イヤン 年齢とりたくない イヤン イヤン このままがいい!」
と歌う彼女達はすでに歳をとらない存在になっている。久住は事実、半分アニメのキャラクターになっているしな。
虚構の萌えの世界に安住したければ、彼女たちと一緒に「きゃはっきゃはっ」って言っていればいい。楽しい代わりにいつまでも成長しない人間になれる。逆に言えば成長しないでいいなら「ずっと」楽しくいられるということだ。僕らは成長を義務付けられているわけではない。ただ、「虚構」だと思っていたアイドルがどんどん「人間」に戻っていってしまうかもしれない。 それは困る。だからこそ、やっぱり「このままがいい」って言いたいんだろうけど。
そんな、「萌え」の世界を存分に味わわせてくれる名曲です。