ヴァニラ画廊「人造乙女博覧会4」でラブドールを見てきた

移転後、はじめてヴァニラ画廊に行ってきました。広くなっていい感じでした。


'14/8/5 〜 8/23オリエント工業「人造乙女博覧会4」
http://www.vanilla-gallery.com/archives/2014/20140805ab.html


ラブドールメーカーのオリエント工業は、1977年からラブドール(ダッチワイフ)を製作し続けてきた老舗メーカーで、2009年の映画「空気人形」にも協力し、映画の中で工場もロケ地として使われている。
ヴァニラ画廊では以前よりオリエント工業ラブドールの展覧会を行ってきた。以前トークイベントにも参加した、そのレポはこちら→「ラブドール 〜実用性と美の共存〜」http://d.hatena.ne.jp/onoya/20100508


久々に見て、改めて現在のラブドールの造形美の素晴らしさと機能の高さに驚く。同時に、現代と比べると1977年の製品は全く美しくなく見えるのだが、それでもこうした製品に対する強い需要があったのだということを、当時のパンフレットを読むと切実に伝わってくる。創業当初は障害者や、様々な性の悩みを持った人向けのビジネスであったようだ。


身体に障害を持った人の性の問題については、映画「暗闇から手をのばせ」(http://www.kurayamikara.com/)で身体障害者専門のデリヘル嬢が描かれていた。ホワイトハンズ(http://www.whitehands.jp/mission.html)という団体は、男性の重度身体障害者に対する射精介助サービスというのを行っている。
自分が興味があるのは、性(欲)に関する問題は、そのまま医療とか介護につながっていくということだ。「スケベ椅子」と呼ばれるものが、介護の現場で使われているという件ひとつとっても、なんだか考えさせられるのである。


展覧会の話に戻すと、ラブドール購入者用の取り扱いビデオが上映されているのだが、服の着せ方や姿勢の変え方など、何か介護のビデオを見ているような気持ちになる。
一体だけ触れるラブドールが展示してあったので触れてみる。人工物という感覚はどうしてもあるが、体の部位によって柔らかさが異なり、本当によくできている。当然胸部は最も柔らかい。
来場客は男女比1対1くらいで、興味本位で見に来る人も多いと思うが、その技術と美しさには皆感動している様子。何よりも、作り手、ユーザーが並々ならぬ思いで40年弱の間進化をさせてきたものであって、それを目の前にして茶化す気持ちなど微塵もなくなってしまう。
パンフレットに載っていた、オリエント工業ショールーム担当の話すエピソードがすごい。ドールが届いた初日の夜(処女)の写真と翌日(結婚初夜を終えた)の写真を撮影された方(購入者)が、表情が変わっていることに驚いてその写真を持ち込んできたのだが、見ると確かに表情が違っていた、とのこと。
その真偽のほどはどうでもよくて、でもこの購入者とショールーム担当の方は、ラブドールへの思い入れを共有しているという点で、ファンダムを形成していると言ってもよいと思う。そういう不可思議なものが生み出されるほどに、ラブドールというものには魅力があるのだ。実物を目の前にすれば、確かにそう思う。そして一定の儀式的なものを経れば、それは容易に物ではなく人になるだろう。

展覧会は今週末23日まで。


参考:ラブドールの参考文献としてはこちら。

ダッチワイフの戦後史 南極1号伝説 (文春文庫)

ダッチワイフの戦後史 南極1号伝説 (文春文庫)