AKBN0 セカンドライブ

AKBN0セカンドライブ 早く持ち歌が欲しい!1期生、2期生、3期生候補入り乱れてます!キングオブクライアント決定戦!重大なお知らせ発表スペシャ
玉川区民会館。仕事が終わってそのまま急いで駆けつける。すでにライブが始まって5分ほど過ぎてしまった。
駅からすぐの区民会館の中に急いで駆け込むも、ロビーに誰もいない。ホールの中からはすでに歌声が聞こえる。右往左往していると、スタッフがひとり出て来て、いぶかしげにこちらをしばらく見た後、「お客様ですか?」と聞かれる。こんな仕打ちは初めてだ!開演直後に誰もロビーに待機していないなんて。そんなギリギリで運営しているライブ、それがAKBN0。
チケ代3000円を払い、バナナをもらう。公式HPによれば、「AKBN 0は来年度のバナナ大賞を目指してバナナ普及活動を行っていきます。」とのこと。このバナナはライブ終盤で使うことになる。
玉川区民会館はキャパ500弱。しかし客の入りは多く見積もっても100人程度。チケットは自由席だったので、前から7列目あたりに座る(特に前から順に席が埋まるでもなく、最前以外はまばらに客が座っている状態)。すでに一曲目(確か「会いたかった」か何か)が終わり、メンバーの自己紹介が始まっていた。AKBN0は売り上げ至上主義なので、センターは佐藤キャメロンかすみ。おそらくは売り上げ順に自己紹介。
MCでは8月13日デビューイベントと同様、お馴染みのエクスキューズ。「AKB48とたまたま似ている」グループ名であることを断り、私たちはネット、ブログでの誹謗・中傷には負けずに頑張ります、とのこと。
曲は、「職業:アイドル。」、「スカート、ひらり」と続く。前2列に陣取ったヲタはMIXを入れて盛り上がっているが、いまひとつ声がそろわないし、それ以外の客は立つ人もまばら。まだまだ現場の文化が成熟していないと感じる。基本的にはAKBをはじめとするMIXを許容するアイドル文化的なノリだが、後ろの方に座っている客層がまちまちで、一体どういう人たちが来ているのか分からない。高校生(男女)から中年のおじさん、おばさんまでいて、ヤンキー風の人からサラリーマン風(自分含む)まで。2期メンバーが出てきて、渡り廊下走り隊の「完璧ぐーのね」を歌い、一旦歌コーナー終了。
イベント進行は土屋有里花というモデルさんがしていたのだが、ここで突如、観客が参加する○×クイズ(「玉川区民会館横断ウルトラクイズ」)を行うことが告げる。メンバーに関する○×クイズに最後まで正解したファン一人に、メンバーの拇印つきサインをプレゼントするとのこと。「ぼいんといってもおっぱいのことじゃないですよ」と事務局に言わされる土屋さん。
○×クイズをどうやってやるかと言うと、舞台センターに立つ土屋さんから右側か左側かに、客席にいるファンを移動させるという、普通のライブでは考えられない(客が満員であることをはじめから期待していない)企画である。メンバーの好きな料理、愛犬の色、メンバーの血液型、携帯の待ちうけ、生まれたところの地名、身長、得意料理、姉妹構成についてクイズが続き、正解者が残り9人になってからはステージ上に客を上げて、一名になるまで行われた。AKBN0のイベントはファンを平気で晒すからこわい。自分は無難に2問目で不正解となり、ほっとして着座して見物した。優勝者は色紙をもらい、メンバー全員との記念撮影。
その後、二期メンバーのヤフオク最終オーディションで落札された私物の贈呈式が行われる。「綾瀬まニャ麻奈夏」からはサイン入りバレエシューズと手紙が「永遠に推してください」というお願いとともに贈られた。最終的には落札者も押し切られて「永遠に推します」と言った後、小指で指切りもさせられる。なかなか押しが強いメンバーである。「松田エミリーえみり」からはパーカーとお手紙。「今年の冬は寒くなりそうなのでいい買い物ができてよかったです。」と落札者。
3期メンバーの最終候補者2名の紹介の後、ライブ再開。東京出身(在住)の3人で組まれたユニット、チームTが、Buono!の「Kiss!Kiss!Kiss!」を歌う。たしかBuono!のファンがいるかどうかメンバーが聞いたが、会場にハロプロヲタはほとんどいなかった。それどころか、この曲を知っている人がどれだけいたかもあやしい。前方のヲタが無理やりMIXを入れようとしてわけがわからなくなる。
MC。8月13日ファーストイベントや8月15日デートイベントの感想を述べた後、「MajiでKoiする5秒前」アイドリングヴァージョンを歌う。そしてラストの曲は、「空手バカ一代」という曲の安直な替え歌、「アイドルバカ一代」。「皆さんバナナは持ってますかー?」、ということで、なぜか観客もメンバーもバナナを持ってラストの曲に臨むことに。(ヲタからの「俺のバナナはー?」という予想された発言もあり。)「高橋キャサリン玲海」が空手の道着を着て登場。板が2枚用意され、一方には「秋葉」、もう一方には「ブログ荒らし」と書かれている。「秋葉」を割ることを遠慮して、高橋は「ブログ荒らし」の板を突きで割り、「アイドルバカ一代」が始まる。両サイドに手書きの歌詞を書いた大きな紙を提げたメンバーが立つ。いかにも手作りといった感じで、中学くらいの文化祭を思い出す。「アイドル一代誓った日から 命も捨てた名もいらぬ…」、まあそれに準ずるくらいの悲壮感はこの後、握手回の後で漂うことになる。
これで終わりかと思いきや、ここで「重大なお知らせ」があるという。ひとつは、東京都北区の防犯ポスターに起用されることが決定したこと。「犯罪0」という意味で「AKBN0」を起用するらしいが、なんというか、毒をもって毒を制する感じなんだろうか。もうひとつは、東京FMへの出演が決定したこと。しかし「スタジオに5人しか入れない」ということで、売り上げ上位の「佐藤キャメロンかすみ」、「茜チュインあい」(この人はどうやら娘。7期オーデでかなり有望視されて関東予選を勝ち抜いていた方のようです。自分も覚えていました。当然全然違う名前で出ていましたが。)、「高橋キャサリン玲海」、「河野スイーツ絵奈」の4名は決定。残り1名を「じゃんけん」で決めるということで、こちらは「最初はグー」ありでじゃんけんがおこなわれた。結果、「松上ゆーにゃん祐子」の出演が決定。


さて、イベントを振り返って見ると、まだまだアイドルとファンとのお約束が全く成立していないがゆえのぎこちなさ、齟齬、すきまが会場全体に存在していた。(客席もすきまだらけだったが、それも一つの象徴だろう。)常連は少しずつ増えているのだろうが、そもそもまだイベントの回数自体が少なく、メンバーの自己紹介も(というかそもそもメンバーの名前さえ)定着しているとはいいがたい。MCも観客の反応を手探りしながら何とか進めているといった印象。歌やダンスも、稚拙であるという意味での文化祭、学芸会的なノリを感じてしまう。もちろん一方でこうした予定調和が成立しないような地下アイドル的な空気というのが、独特の熱さを持つことは否めない。現場にいて、何が起こるのかわからない恐さ、面白さがある。もしこの現場が続くなら、少しずつこの現場の色(文化)が形成されていく過程を見ることができて、それはそれでとても面白いことだろう。


ステージ上に机が用意され、握手会が始まる。やろうと思えばループもできるような管理で、特にチケットにマーカーでチェックするというハローの現場のようなことはしない。進行役の土屋さんは一応握手は一言声をかけるくらいでお願いしますと言うのだが、はがしもゆるく(というかそもそもスタッフがそんなにいない)、好き放題(10秒以上は)話せる感じであった。プレゼントもその場で渡せたようで、自分の番が来るときには、それぞれのメンバーがいる机の上にはプレゼントや手紙が載っていた。
握手で何を話すか深く考えておらず、しかも全てのメンバーへの思い入れも知識もないので、とりあえず変顔をお願いすることにする。ところが、想定外らしく、「えーどーしよ」と困った後でなんとなくしてくれたり、迷った挙句「アイドルなのでしません」と言われたりする。メンバーによって反応はまちまち。
ところで、「アイドルなので(変顔を)しません」って面白いなと思う。もはや「変顔」をするアイドルなんていくらでもいるわけだし、それがひとつの特技のようなものとしてアピールされることさえある。そう考えれば、変顔をしないアイドルは「アイドルなのに変顔をしない」のだ。ただ、もともと変顔を始めた頃のアイドルは(といっても変顔の起源は全く存じないけれども)、例えば辻加護の時代だったら、「アイドルなのに変顔をする」存在だったはずで、それが今はある程度一般化して、「アイドルなので変顔をする」時代になっているとも言える。
アイドルと「変顔」をめぐって、1「アイドルなので変顔をしない」、2「アイドルなのに変顔をする」、3「アイドルなので変顔をする」、4「アイドルなのに変顔をしない」という4つの可能性を見ることができる。アイドルは既存のアイドル概念のようなものに自足しない。常にその定義のようなものを更新し続け、他と差異化して生き残っていくものだ。そうしたアイドル像の動態を、「変顔」たったひとつですら感じることができる。自らをどのようなアイドルとして位置づけるかが重要であること。そしてそれを時代のアイドル像とできた者が勝利者である、というアイドル戦国時代を思う。
「茜チュインあい」にはウインクをしてもらおうとして失敗。どうやらできないらしい。そして(いつ決まったのか)一推しの「佐藤キャメロンかすみ」(かすみん)には、昨日のカリン様のリベンジとして、「豚野郎」をお願いすることに。
「一推しで応援してます」「あ、ほんとですか!ありがとうございます。」「ちょっと言ってほしい言葉があるんですけど…」「えーなんですか?」「『この豚野郎!』って厳しく言ってほしいんですけど…」
「この豚野郎!」(怒った感じで)
「…こんな感じでいいですかぁ?」
「あざーっす!!」


ことわざ「江戸のかたきを長崎で討つ」よろしく、昨日のリベンジを全く関係のない現場で果たすことができました。奇しくも、かすみんは長崎出身なのです。その後、隣の高橋さんには勢いで「二推しです」と宣言してしまうなど、浮かれ気味で握手を終え、にやつきながら舞台を降りる。
握手の後にメンバーからごあいさつがある、ということで、そのまま座席で握手が終わるまで待つ。終盤、左手に持ったバナナを持ちながら握手に臨む強者が鮮烈な印象を残して、握手会は終わる。
メンバーからのあいさつで終わりかと思いきや、またも「重大なお知らせ」があるという。これは明らかに泣くパターンです。2期メンバー松田が試練(売上目標を達成すること)に臨むこと、これは以前から告知されていたことだ。そして、1期メンバーの中にも追試に臨んでもらうメンバーが2名いることが発表される。売り上げ1位の「佐藤キャメロンかすみ」と15万円以上売り上げの差があるメンバーが追試を受けるという基準。AKBN0は売り上げ至上主義を謳っているから、当然と言えば当然の流れ。
進行役の土屋さんはこのお知らせを涙ながらにようやく読み上げる。告知されたメンバーだけでなく、他のメンバーも多くが(本音はともかく)、告知後のあいさつで、「このメンバー全員」でやっていきたいので、応援よろしくお願いします、と言う。システムとしてはメンバーの代替可能性を高く指向しておきながら(例えば8/18オフィシャルブログ初めての記事においても、スタッフが「私の予想では、将来紅白出場を果たした時に、デビューメンバーは一人もいないんじゃないかと思います。AKBN 0 は実力主義ですので、強いものだけが残っていきます。」と記している)、すでにメンバーや、その舞台裏での努力を見てきたものにとっては、そのメンバー構成は代替不可能なものとなっている。これは極めて人間的と思われることであるが、一方で本気で上を目指そうとする時には意識の甘さとして首を絞めることにもなりうる。いずれにせよ、遅かれ早かれグループの中から脱退者は出るだろう(あるいはグループ自体が早々と崩壊するかもしれない)。そうした、アイドルの「生き死に」を売りの一部として成立しているアイドルなのだから、仕方がない。ただ気になるのは、果たして客席がどれだけそのドラマに乗ってきているのかということだ。どうも、ステージ上の悲壮感に、客席側の愛がついてきていない気がするのだ。正直、思い入れが強くなる前に、早々と脱退をかけた試練があるというのは、どうなのかという気もする。ぼくはある程度冷めた目で、バトルロワイヤル系アイドルの極地としてデフォルメされきった世界を興味深く見つめていた。(とは言っても目の前で好きなアイドルにお願いされて、一銭も出さないぼくとは思わないが。)
最後に、メンバーと観客、一緒に両手で頭の上にゼロを作ってイベントは終わった。両手をゼロの形にして「ゼロ!」と言いながら思うのは、結局アイドルも観客もいつかゼロ人になってしまうのだろうという諦観のようなものだ。しかしこうした終末観を伴うアイドルの磁力は強い。すぐいなくなってしまうかもしれないから今見ておこうと思う気持ちが、結局自分を二度目のイベントに連れてきているのだ。そう思うと、「期間限定」とかタイムセールに踊らされている客のようで嫌になるが、そんな「生き死に」を演出しなくたって、少女の身体性そのものが実は期間限定のものなのだから、多くのアイドルヲタは今に隷属するという性質を持つものなのかもしれない。その点で言えば、ヲタは「今の奴隷」であるということも強ち言い過ぎではないかもしれない。
そういえば、自分も「次のツアー」単位でしか、未来が見えない。そんな豚野郎です。