お寿司を食べるのは誰

さて、このライブで最も特筆すべきは曲ではない。途中はさまれるVTRである。
℃-uteメンが寿司屋に行って、寿司を食べる。そういうVTR。テロップとして入るのはネタと値段くらい。それぞれのメンバーを独立に映していき、何の説明もないままVTRが終わる。何の説明もない。そして、次の曲とも何の関連性もない。
じゃあヲタはどうしているかというと、推しメンがネタを頼んで食べるごとにヲタ特有の歓声をあげる。とりあえずヲタは盛り上げ方を知っている。だけども、この歓声の意味も全く分からない。とりあえず盛り上げておけ、は正解だが、VTRの見方が全く分からない。
これを見て、何の疑問も感じずにただ萌えという感情のみ引き起こして受け流せるヲタがもしいるのだとしたら、たいそう動物化が進んでいらっしゃる。
僕は「レインボーピンク」以来かもしれない衝撃を受けた。これは前衛芸術やあ、とか言い過ぎたい。
ひとつの読み方だけ記してみる。「お寿司」のいろいろな「ネタ」を食す℃-ute。これは、この映像を「ネタ」として、℃-uteを「推す士」(ヲタ)がそれぞれ味わってね、という映像ではないのか。つまりヲタへの皮肉でもあり、ヲタへのサービスでもある。
また、受動的にただ回る色とりどりの「推す士」を℃-uteが食べるのだから、アイドルがヲタから搾取するという構図にもなり、一方その映像にヲタは萌えるのだから、ヲタがアイドルを搾取するという構図も生じる。アイドル現象を取り巻くこうした複雑な状況を映像作品にしてライブ中に流すということ。うーむ、深い。ヲタが自らを相対化する契機となるか。…いやならないんだけど。
さて、大阪にもいいお寿司屋さんがあるみたいなんで、明日もふらりとのぞみで。