腐らないなら、咲く。

正直に感想を言えば、予想していたほど「本格」ではなかった。
だからと言って娘。たちが「本格」を演じる能力がなかったと言うつもりもない。確かに石川の歌は安心して聴くことはできなかったが、全体としての、芸術としての完成度で言えば、当然これまでとは比較のできない出来である。
ただまあ、僕の予想していた「本格」ではなかったんだ。うまく説明できないけれど。
7日の辻公演を見ないとどうも自分の考えがまとまりそうにないので、感じたことを指摘して、まとめるのは明日に先送りしてしまうことにしよう。


・意外と「娘。」の存在が舞台中にも露わになる。
http://d.hatena.ne.jp/flyingprincess/20060802でも書かれているとおり、舞台の相対化というものが今までのハロプロではあって、それを内輪ネタ的に消費するというのがひとつの楽しみ方であった。今回はそれがないだろうと思っていて、それが「本格」だと思っていた部分がある。でも意外とあった。最後フィナーレに入るところでも、やはり役者からアイドルへの転換を説明することは必要だったようだし。
と言うわけで、娘。のミュージカルを見ているという感覚を保った上で舞台に没入することは出来た。だから役者の「代替不可能性」は保持できている。


・歌唱レベル
圧倒的にこれまでのミュージカルより声量が要求されている。石川は成長は見られるけれども、発声法がどうなのかなと思ってしまう。やはり心配。高橋と藤本に関してはすばらしいと思った。吉澤はすこし出きらないところがあった。実際そんな心配をしている時点で「本格」ではない。


・演技
高橋は頑張れていると思う。まだまだ姫川亜弓の足元にも及ばないだろうが(設定が酷似しているわけではないが、舞台を見ていて「ガラスの仮面」の「ふたりの王女」を思い出してしまった。二つのキャラクターを演じるという意味で「王子とこじき」も)。もっとできるだろって思う部分もないではないが、今後に期待。
藤本の高笑いって、いい。


・久住はただものではなかった
評価を保留にしていた久住だが、高橋以外では一番印象に残った。一番役になりきっていた感がある。あの無垢さがドラマに深みを与えていたんじゃないかなあ。
…おそろしい子!


・僕の涙腺
ハローの演技に対してはほとんど無差別に僕の涙腺は緩むように設定されているので、僕の涙は舞台の出来のバロメーターとしては機能しない。で、まあ設定どおり涙がいっぱいたまりました。流すのは明日にします。
吉澤かな、「舞台は現実なのだ」みたいなセリフがあったけれど、よい芸術はリアルを適切に切り取って僕らに与えてくれる。そのリアルはちゃんと僕の胸にも届いた。


・フィナーレ
立つヲタ若干名。立つんだったら立ちたいんだけど、ありゃあ立てない雰囲気だ。むしろ「本格」を一番感じたのはここなんじゃないかと。それが、「舞台の余韻に浸りたくて、ライブは不要」という空気だったのなら、舞台は大成功と言えるだろうが、どうだろうね。多分タイミングを逸しているというのが大きいのだろう。娘。が「さあみんな立って!」とか言ってくれるといいんだけど。


木村信司の言葉
「アイドルとは何か。人間です。」
さあ、この言葉とどう戦おうか。明日は辻公演だ。アイドルは人間?それとも神?それとも。
彼の言葉を真摯に受け止めるのは、ヲタにとってはひとつの覚悟かもしれない。いつまでもアイドルでいられるわけではない。そのことをどう捉えるか。ヲタは永に安できるさなの世界にとどまっていたいけれど。
いやーでもさ、やっぱり辻って人間じゃない気がするんだよね。