新風と懐古

4年前は昼夜ともにアリーナ10列以内で見た。当時はもっと集客が見込めたから、アリーナ席もいっぱいいっぱいスペースが取られていた。
今回、ステージ設定がどのようになるのか、事前に細かくは分からず、中に入ってみて「田」型のステージにわくわくした。4年前に比べたらそりゃあ客は少ないかもしれない、けれどもハローだな。このハローの雰囲気は変わらない。始まるまでの緊張感、始まった後の解放感だ。
昼公演はスタンド9列。今回ライブがカラオケ大会になるのは全く構わなくて、僕はセクシーボーイが踊れるんだったら楽しめるだろうと思って昼夜ともに通路席にした。2曲目に早くも終わってしまったけれども、はじハピとかさぁ恋とか恋レボとか、踊ってのれる曲が多くてとてもよかった。気になった点を記してみる。
℃-uteの歌詞は分析の価値あり。やはり新興勢力と既成化した勢力の歌詞の作り方は違うよな。娘。よりもベリ、ベリよりも℃-uteの歌詞が自閉する、と見ていいのかな。
・久住の笑顔に狂いを見る。春紺のレインボーピンクで感じてはいたけれども、久住の笑顔はこわい、かわいいとかじゃなくて、ちょっとこわい。
・すき焼きと「ぴりり」は沖縄民謡をモチーフとして雰囲気がよく似ているのはずっと意識していたが、すき焼きの途中で、これこのまま「ぴりり」に移行すんじゃないのと思った5秒後くらいにほんとにそうなった。
・見た人は分かるだろうが、MCでの萩原がすべる。どう反応していいか全く分からない。ほんと、誰が考えてんだか。
・「おおきに。道端から…」「笑っちゃおうよ BOYFRIEND」で分かるように、最近つんく大阪弁を好んで使うようだ。で、これは僕がつんく味という特徴の一つの表れなのだ。僕が言いたい「つんく味」というのは、簡単に言えば、恋愛の世界を独断の世界に閉じさせないということ。ベタに堕しない、ネタ的な視点を持ち込むという点でオタク的と言いたいものだ。大阪弁は、ただベタに恋愛に没入する行為を緩和させ、相対化する機能を持っている。つんくの歌詞にはこういう、ベタに何かを歌い上げることを逸脱させる部分が多く含まれる。例えば「もてなして」「一切合切」がそうだし、「ルノアールのように」がそうだし、「スッペシャル ジェネレ〜ション」の「ッ」「〜」がそうだ(当然これで思い出す「トロ恋」の「〜」も然り)。もしこの曲名が「スペシャルジェネレーション」だったらavex系の歌詞どうでもよしの曲名と何ら変わらないが、この「ッ」「〜」のおかげでこの曲はベリ工の中でも最も偉大な曲になっていると思うのだ。
・「Ambitious!野心的でいいじゃん」、確かに娘。的ではあると思うのだが、もうひとつひねりが欲しいんだよな。ライブの曲としてはよい、けれども、歌詞としてはあと一歩の感がある。
・「好きな先輩」と「本気で熱いテーマソング」
「4th」の2曲がここで聞けたことが感慨深い。「好きな先輩」のイントロで、泣かないまでもぐっと来てしまった自分がいた。5期をはじめて認めようという気持ちになれた思い出の1曲。5期との付き合い(という言い方が正しいかどうか知らないが)もだいぶ長いんだな、と実感した。「本気で熱いテーマソング」、最後の「いざ進め」の連呼からラスト、「モーニングムスメ。!」のところが好きだが、4年前は飯田が言ってた印象がある。たったの4年で「隔世の感」なんていうのはバカバカしいかもしれないけれど、でもやっぱり「時代」の移り変わりってのをこういうところでひしひしと感じてしまう。
・最後のメドレーに戸惑い、でも肯定。ピースとセクシーボーイをミックスしたような基調、そして各グループの曲に移行していく。これ、子供にとってはめまぐるしすぎてついていけないだろうし、だからといってヲタがこれをのぞんでいるとは思えないし、という意味で、なんでこんなことにしたんだろうと一旦思うんだけれども、以前「絵流田4丁目」の意義を論じたのと同じ意味で、評価していいんじゃないかと思う。いくらでも編集可能な現代芸術のひとつのあり方とか、言ってみる?…うーん、ちょっと自分でもわかってない風だなあ。
それと同時に、なんかこれ「旗あげゲーム」と一緒だなあ、という幼稚な感覚もあった。混ぜたからってなんなんだっていう戸惑いは確かにある、だけれども、メンバーを混ぜてんだから曲も混ぜちゃっていいんじゃないかみたいな、自分でも納得できるようなできないような思い。何でもありのグダグダと見るか、画期的な試みと見るか。ただ、やはり新しい刺激はあっていいんだと思った。
・あそっか是永ってエッグだったんだ。
最後のメンバー紹介でようやく是永がいたことに気づく。だってエッグなんか注意して見ないもん。夜公演では辻の次に注目していました。ひとりだけ腿が太い。なんか遠慮がちに踊っているように見えるし、ハローの中で異色の本格派(歌じゃなくてフットサルなんだけど)という点で、第二のゆきどんか、みたいなインスピレーションも湧く。それでも、しっかりとアイドルの仕事もこなしてるんだと思うと、チームdreamにいながらdreamのメンバーではない宇津木とは違うよなと思う。いやそれ以上どうということもないのだが。
・辻
衣装が派手で目立って見つけやすくてかわいくてよかった。出番は少ないけど、それでもいい。辻の代替不可能性を感じちゃうんだなあ。そこだけ違う空間なんだ、やっぱり。夜公演、アリーナ席でかろうじてレスをもらえました。
辻の代替不可能性だとか、他のメンバーといかに違うかとか、絶対性とか超越性とかいくらでも語れるよな、とライブ中に思う。だけれども、そういう風にアイドルを語るということ――意味に固執するということ――が違う宗派にとって意味を成すかというと全くで、「いいたいことは分かった、でも俺は梨華ちゃんが好きなんだ」と言われたらおしまいである。「意味」とはつまり「差異について語ること」であって、他と違ってこうである、と言ったところで辻の絶対性は示せない。じゃあ絶対性を示すためにはどうしたらいいかって、少なくともそれは「差異の体系」であるところの「言語」の仕事ではないように思える。でも、とりあえず「ニャー」と叫んでおこうか、っていう結論にも落ち着きたくない。辻の超越性に限りなく近づくために、言葉によって漸近線を描いていく作業が自分にできるか。