いつもきてくれているみなさん

残念ながらこの土日はハロパに行けなかった。
その分来週に金を回す。

ところで、辻は最近MCで「いつもきてくれているみなさん」と言ってくれる。そういう辻はやっぱり特別だと思う。
ヲタの世界に下りてきてくれる辻。
おならをすることをテレビで公言する辻。
「うんこうんこ」言う辻。
そうやって、自ら超越性を剥ぎ取っていくように見える辻。
ダウンタウンDXで、
試食コーナーに何度も出没するところを暴露される辻。
それはあまりにも辻らしいという点で、本来作り話という疑念を抱いてもいいくらいなのだが、いやそうじゃない、辻ならやりかねないと思わせる辻であるのだ。
それとも、その作り話そのものが辻である、という言い方をしたほうがいいかなあ。

ともかくも、アイドルという存在がもともと持っていたはずの権威をことごとく破壊していく様が、逆に超越性を帯びたものとして自分の目に映る。
こんなの、辻しかいねえよなあ、と思わせてくれる。
卒論では、辻加護以降のハローのシーンを、超越性が剥奪されていく過程に着目して論じたけれども、いま辻だったり道重だったりキッズだったりを見てみると、こういう超越性の獲得の仕方もあるんだと思わせてくれる(まあその中でも自分は辻のありかたがやはり特異に見える)。
僕は辻というのは虚構的な存在で、それゆえ自分達が主体となって勝手に構成していけるアイドルであるかのように感じたこともあった。そういう、超越性が失墜したアイドルとして辻を捉えていたことがあったけれども、それは見直さなければならないかもしれない。

僕は倫理的な問題意識からヲタになった(長いけど以下参照 http://www.geocities.jp/moaning_moron/ranai.html)。倫理は大澤真幸の言う超越的他者――ぶっちゃけて言えば自分じゃ好き勝手にできないもの――の存在があってこそ成り立つと思うのだけど、前期モーニング娘。(2001年くらいまで)まではテレビ番組のつくりだとか歌詞だとか(歌詞は実はそのあとも続くんだが)によって娘。という存在が超越的他者として君臨していたと思う。それが辻加護のロリ路線を象徴として、超越性が失墜していき、アイドルは自分がなれるものになった(コスプレに見られるように)。そうしてアイドルは「大したことないもの」になり、アイドルに対する「距離感」もなくなる。好き放題アイドルを消費するようになる。
そんな超越性の消滅によってヲタの倫理意識も(つーか現代人の傾向として、とまで言ってしまいたいのだが)薄くなり、マナーの悪い者が増えてるんじゃないかという、まあ極論だけれども(本当はもっと長く書きたいのだけど)、そういう論の持っていき方というのはアリなんじゃないかと思っていたわけだ。(それでもなんとか倫理を!というので、http://www.geocities.jp/moaning_moron/gettou.html の「最後に」を書いてみたわけだが…)

だけども。

『実在しない虚構のキャラクターが、にもかかわらずどの特定の個人の思惑にも欲望にも左右されない、見かけ上の自律性を、(中略)獲得する可能性はないでしょうか?そのとき、そのキャラクターをめぐるファンたちの共同性とは、一体どのようなものとなっているでしょうか?おそらくは、幸か不幸か「脳内恋愛」に終始していられる局面は終わりを告げ、思いがけない出会いの幸福やストレスに開かれた「公共性」のようなものが育ちはじめると思われます。』(稲葉振一郎「モダンのクールダウン」より)

いや、辻って虚構のキャラクターじゃないじゃん、というツッコミが来そうだけれども、今の僕の捉えかたは次のとおりだ。「辻は少なくとも普通の人間ではなくて、もともと虚構の存在だが、それがあたかも実在するかのように現れてきた」。
実際辻は、そのキャラクターを守った上で、我々の予想を遥かに上回る「辻っぷり」を発揮してきた。その辻性への敬意・崇拝というのは、自分の中にはっきりと感じる。初期娘。ヲタの、娘。を人格的に尊敬する、というありかたではないのだが、ねじれにねじれたアイドル認識が結局一周して元のマジヲタに戻ってきたような感覚だ。
「虚構の存在であるはずの辻があたかも人間のように現れてきたので、ライブでレスをもらえずに凹む。」とかって、言っていいんじゃないかなあ。一見、昔のアイドル崇拝と何ら変わんないんだけれども。

ともかく、こうしてメタ的な、DD的な捉え方をしていたアイドルがまたベタへと回帰してくることで、とりあえずアイドルの寿命は延長される。アイドルの権威復活ってことである。それが、じゃあもっと話を拡大して、「公共性」とか「倫理」を語るなんてことは大それちゃっているのでしないでおくけれども、最近悩んでいた「辻なのにマジヲタなのはなぜなのか」という自分の中での問題には多少ケリがついた気がする。


ところで、辻と握手をしたことがない。
2003のハワイでは、辻だけが体調を崩してしまった。これに対してもネタ気味に自分にとって辻がいないという理由になっていたわけだが、去年とかも握手イベには行けなかった。
握手したらなにか認識が変わるかもしれないという思いはあるから、期待して待っていたのに。…ハワイ、行けないっすよその日程。しかもやぐ・ののという推しツートップのハワイツアー、かなり凹みました。しょうがないのでハロパに金を回します。