『第7回 セクシー☆オールシスターズ』

今さらながら、10月11日(祝)に行ったイベントを振り返る。地下アイドルイベントを途中で切り上げての六本木。『第7回 セクシー☆オールシスターズ』、morph-tokyoにて。
自分と全くそぐわないライブハウスでの開催。地下への階段を下っていく時も、開場は本当にここでいいのだろうか、と恐る恐る。全然関係ないクラブイベントに混ざりこんでしまったらどうしよう、と不安感一杯で受付に並ぶ。前に並んだ客越しに、テーブルに置かれた紙を見ると、「爆乳」の文字があり一安心。当日券を買い求めると、受付の女性に、「今日は誰を目当てに来られましたか?」と聞かれる。聞かれても困る。そう言えば、地下アイドルイベントでも聞かれたのだった。やはりこうした調査は必要なのだろう。「誰ということもないんですが…どれか言ったほうがいいですかねえ…」とためらった結果、「爆乳三国志」ということにする。こういうの危険だな。一応、全体を見にきたつもりが、自分で自分を「爆乳三国志」目当てで来たヲタと定義づける行為。「好きという気持ち」よりも「好きと言う行為」が先行することで、気持ちがあたかももともと自明であったかのように遡及的に構成されてしまうという危険。その手には乗るまい。
カウンターでドリンクチケットを水と交換するが、そこにいたのは黒人女性。それでまた怯む。自分のホームタウンではない、異文化空間にいる感覚を強める。会場となる狭いライブハウスに入ると、まだ客は30人程度。パンクファッションの男性もおり、またも違う会場に迷い込んだかとびびる。もっと一目見て「アイドルヲタ」という人々が多くいると思っていたが、自分の勝手な定義における「クラブ文化」の人たちが多いような気がする。地下アイドルに続き、この場でも圧倒的なアウェー感に、会場の後方で縮こまりながら開演を待つ。こわいこわい。
ところで、『セクシー☆オールシスターズ』の説明をしておかなくてはならない。出演者は、出演順に、「WOOHOO」、「胸の谷間にうもれ隊」、「爆乳ヤンキー」、「美脚戦隊スレンダー」、「爆乳甲子園」、「小桃音まい」、「D−Rive」、「爆乳三国志」(この中では「WOOHOO」と「小桃音まい」がゲスト的な位置づけか)。ざっくり言って、基本的に「おっぱい」だと思っていただいて構わない(適当)。詳細な説明、動画は以下のエントリがよくまとまっているのではないかと思います。「30分で分かるセクシー☆オールシスターズ」(http://d.hatena.ne.jp/aniota/20100821/1282390423
18時過ぎに開演。ライブは3時間半程度続いた。もはやその詳細は忘れてしまったが、印象に残った点を記しておこうと思う。
まずは、曲に関して。とにかく歌詞は「おっぱい」やら「美脚」やらに関わるありとあらゆる妄想や下らない比喩表現にあふれている。それはしかし大人の表現というよりは、中学生の精一杯の想像というような感じで、あからさまな性的表現とまではいかない。そこが、アイドル現場としては絶妙のような感じがする。それは1対1の妄想を惹起するというよりは、エロいものをみなで共有するという奇妙な連帯感を生み出すような気さえするのだ。ある曲で起こるBメロの「おっぱいコール」(PPPHの感じで「おーっぱい!おーっぱい!」)はなぜか純粋なすがすがしさすら漂わせた(自分も声の限り叫んだ)。
続いて、アイドルと観客との距離について。地下アイドルのように、完全にアイドルと客が融解してしまうことはなかった。しかし、距離の近さは想像以上だった。例えば、お菓子を客席に撒く、歌詞に登場するストッキングやらブラジャーが客席から投げ込まれる、アイドルが客からタオルを借りて汗を拭いて返すなど(「タオル貸して」っていうアイドル初めて見た)。アイドルブログのやりとりから、常連となっているファンはMCで名指しされることもあった。ブログでDMをやり取りしているファンもいる模様。ここまで来ると、気軽にDD的な楽しみ方はできそうにないなあと思う。そう簡単に離脱できる関係ではなくなりそうだ。
今回のイベントはメンバーのひとり、助川まりえの誕生日(10月13日)に近いということで、ファンの手で生誕祭が行われた。このイベントは出演グループがかわるごとに5分ほどの休憩があるのだが、その際にファン有志によってサイリウムとクラッカーが配布され、サイリウムを光らせるタイミングも伝えられる。サイリウム祭は見事成功、各メンバーからお祝いの言葉、ケーキや花束も贈られる。正直この「セクシー〜」の場でこんな感動的な場がありうるとは、想像しなかった、というより、なんだか違和感があった。しかしライブ終盤「爆乳三国志」の際に改めて他のメンバーからお祝いの言葉があったとき、もうそこが感動的な場であることは疑いようもなくなった。メンバー全員が涙涙となり、会場全体もそれを温かく受容したように見えた。つまり、ぼくは「セクシー☆オールシスターズ」の名と、「おっぱい」「美脚」の表象によって、それをエロ目的のおふざけ空間という文脈において消費しようとしていたのだが、そこには全く別の物語が存在したというわけだ。
まとめると、「セクシー☆オールシスターズ」のライブは、歌詞や衣装といった表象レベルでは中学生レベルのエロ妄想を炸裂させたネタ的な消費を指向するように思えるが、一方でアイドルとファンはかなり濃密な関係性を築いている。このバランス感覚が絶妙に思える。始めアウェーかと思われた空間は(正直もっと荒れた現場だと思っていた)、ライブ終盤には自分にも随分と居心地のよいものになっていた(ハロ現場とある程度似た雰囲気を感じた)。
ライブ終わりの段階では、観客は60〜70くらいいただろうか。その後、客のいたホールがそのまま物販会場になるらしく、客のほとんどはその場に残っていた。自分はこの段階で外に出た。地下アイドル→セクシーと、6時間以上もずっと立ちっぱなしで疲れるも、ハロ現場にはない新鮮さも感じて、充実した一日となった。