『アバター』

休みだったので109シネマズ川崎という映画館で見る。
数少ないIMAXデジタルシアターということで、よく知らないが3D映像がすごいという話なので見てきた。普段は「映像がすごい」の売り文句にはなびかないのだが、なんとなく。
平日14時台の回で、500人のキャパのシアターなのに、ほぼ満席。
専用のめがねを着用して鑑賞。聞いていた通り、臨場感がある。近くと遠くがはっきり分かれて、初めは酔うほど立体的に見える。問題は字幕で、ぼくは英語のリスニング能力がないから字幕を見ざるを得ないのだが、字幕がスクリーン下部と横に出るので、そこに目をやる時間が無駄にかかってしまう。それを措けば、映像の力だけでも十分3時間楽しめる作品だと思う。
物語は「もののけ姫」だとか「ナウシカ」だとか「マトリックス」だとか、ヤフー映画のレビュー等では書かれたりもしているし、空に浮かぶ島はラピュタを思わせもした。おそらくそれなりに影響を受けてはいるのだろうと思う。簡単に言えば、自然(との共生)⇔人間(の独善)というようなありふれた対立軸に沿って話は続くが、興味深いのは明らかに自然側のナヴィ族の生活の描き方が、精神世界やらニューエイジの世界観を色濃く出していることだ(ナウシカのマンガ版はどんなだっただろうか?)。植物の中を電気が通っていて、森の全てがつながっているとし、そして偉大な神(エイワ)という存在がいるとする。(エイワという名には由来があるのだろうか。いかにも日本語的な響きだ)
主人公の元海兵隊員は、人間側を裏切って、ナヴィと共に戦い、最後にしぶとい敵役のボスを倒す。ぼくは映画をそんなに見ないから、ハリウッド映画が自国に批判的である例をあまり知らないので、新鮮だった(まあ細かいこというといろいろな解釈があるだろうが)。そういう点で、しっかり言いたいことを言おうとしている映画ではある。果たしてジェームズ・キャメロン監督の次回作とされる、原爆を描く映画はどういったことになるのだろうか。
とはいえ、やはり映像が引っぱっていく映画であることに間違いはない。ストーリーの細かいところを気にしなくても楽しめる。映像主導の映画はしばしばそのことにおいて批判にさらされるが、実際に見ると、それはそれで強みだと思える。その方がわざわざ映画館に見に行くという意義はあるように思われるから。この臨場感とやらが、一体どこまで突き進むのか、興味深い。
映画が終わって5階にある映画館から出て歩いていたら、吹き抜けから飛び降りたくなる衝動に駆られた。途中のあれにつかまればうまいこと下までおりられるんじゃないか、みたいな、映画の世界から抜けきっていない自分の世界認識。感覚を支配する力はすごい。「マトリックス」みたいに仮想現実(少なくとも機械を通した現実)を見せているという内容の映画を、「マトリックス」みたいな装置(まだメガネという簡易的なものではあるが)によって我々観客は見ることができる。もはや内容だけでなく、映画の見方という点においても、「現実」ってなんなのだか、と考えさせる映画だ。