歌詞における「前髪」について

先日のハロプロライブで聞いたこぶしファクトリーの曲で、「前髪が決まんなくて」という歌詞があって、そういえばハロプロの歌詞世界で前髪って全然決まってないなあ、というイメージがあったので、実際に調べてみることにした。
結論から言うと、別に前髪がそんなに決まってないわけでもない。ただそこから歌詞における前髪とは何かということを考えたので、ちょいと記録として残しておきます。
以下は、ハロプロの楽曲の中で歌詞に「前髪」が出てくる主な曲である。前髪がどういう意味で登場するのか、いまひとつわからなかった曲は省いております。なお、並び順は歌ネット(http://www.uta-net.com/)の検索で登場した順なので、特に年代順になっておりません。(あと、歌詞の改行は気にしてません。)


前髪が決まんなくて 悪戦苦闘 正解探求の 努力が実を結ぶのさ
「GO TO THE TOP!!」(こぶしファクトリー


前髪後ろ髪引かれまくる 片道切符
「次々続々」(アンジュルム


目を見られると心まで 見られるようで 知らない間に前髪がね 長くなっていった
冷たい風と片思い」(モーニング娘。'15)


切りすぎた前髪 ほつれたワンピース 欠けた爪 断線してるイヤホン
「汗かいてカルナバル」(アンジュルム


前髪少し切ったのよ? “彼氏”なら みんな 気づいてくれるんだよ?
「わかっているのにごめんね」(カントリー・ガールズ


前髪の隙間からね 見つめてる未来
「未来へ、さあ走り出せ!」(Juice=Juice)


鏡の前ってなんだか不思議で 勇気の出る日 そうじゃない日 いろいろね それでも100%自信がないのは 前髪のニュアンスだけで なんとかするわ
「Rockの定義」(田中れいな(モーニング娘。))


前髪を失敗した時 ほんのちょこっと 笑ったでしょう その後すぐ 「似合う」とか言ってフォローする…かわいいやつ
「まっすぐな私」(Berryz工房


前髪そろいすぎ! エッ?
「乙女の心理学」(モーニング娘。


前髪を切ったら 似合うと言われたり
I have a dream」(真野恵里菜


冗談を言い合って 二人じゃれあって たまにケンカもしたりするけど 何気ない事が大切なんだね 前髪切りすぎたり 優柔不断だったり
「こんな私でよかったら」(吉川友


前髪もパッツリだぞ とっぽいショートカット
「ショートカット」(アンジュルム


前髪乱れても それでもまあいいよね 私に変わりはない
青春コレクション」(モーニング娘。


今日はいつもより 早く起きて カール巻いてみた ちょっと効き過ぎて 前髪とか なんか変ね
「通学列車」(モーニング娘。


短く 切った髪を あなたは 笑ったけど 今でも この前髪 そのまま
「月色の光」(安倍なつみ


前髪はどん位 切っていいの?
「なんちゅう恋をやってるぅ YOU KNOW?」(Berryz工房


伸び始めてきた前髪を 少し自分で切った 気がついてくれたのはきっと あなただけでした
紫陽花アイ愛物語」(美勇伝


加護亜依ぼん」 前髪が決まらないだけで 分かりやすいほど 凹む
女子かしまし物語」(モーニング娘。


こうして見てくると、前髪にいくつかの役割を託していることが分かる。
1.自分で切ることができるということ(変化をつけられる)
2.環境条件(風とか)により変化すること
3.顔の一部であること(見られること)
4.視界を遮るものであること

大方上記の4つについて留意しておけばよいのではないかと。
私が最も想定していたのは、「思春期の女の子が前髪を切り過ぎる」という、「ささいでありながら本人としては切実な、日常的な失敗」のモチーフとして登場しやすいのでは、というものでしたが、それ以外にもいろいろなパターンがありますね。
「前髪」というモチーフが優れているのは、髪は勝手に伸びるものなので(身体の中で最も変化が大きい)、切る必要があるのだが、前髪は顔の一部であって誰もに見える身体的パーツであり、オシャレの表現にもなるし、心理表現(決断・切り替え)にもなる、そして視界を左右するという意味で象徴的なものとしても機能するということですね。どんな役割で使われているか(あるいは使われうるか)列記してみます。


・風などの外部環境要因により前髪が乱れる(不運のモチーフ)
・逆にうまく決まったという幸運のモチーフ
・前髪が失敗したこと(うまくいったこと)による、恋人等とのコミュニケーション(ささいな日常の尊さのモチーフ)
・前髪を切るべきかどうかというささいな、日常的な悩み
・見られたくないので前髪を伸ばす/前髪を切ったことに気付いてほしい
・視界をクリアにする(前向きになるという象徴的意味合いでも使用可)ために、前髪を切る/手でかき上げるなど
・決意・覚悟の表現としての前髪カット


ということで、調べてみたら、前髪というのは歌詞表現の中でかなり使い勝手のよいものだと気づいた、というお話でした。