アイドル批評誌既刊のお知らせ

新刊のamazon発売開始を記念して、既刊の紹介を。amazonへの出品代行に関しては、密林社さま
http://www.mitsurin.com/にお世話になっています。
それぞれいい文章が集まってますので、ぜひ買ってください。



アイドル領域Vol.3

アイドル領域Vol.3

アイドル領域Vol.3
特集:自己言及
「アイドル」という現象は、「自己言及性」とは切っても切れない関係性にあります。そもそも、アイドルは常に「アイドルとは何か」と問われてきた存在です。それは消費者側からの一方的な問いかけではなく、送り手側も、「アイドルとはこのようなものである」というその時代時代の暫定的定義づけの中でアイドルを送り出し、またその定義づけの運動に自ら参与してきたように思えます。そして現代、もはやそうしたアイドルの定義づけ(アイドルらしさ)をめぐる闘争はアイドル自身が担うようにさえ見えます。
『アイドル領域Vol.3』、前半は主に楽曲を中心とした「自己言及」についての文章が中心となります。自己紹介ソングの歴史、そしてAKB48やジャニーズ、初音ミクにおける自己言及ソングの歌詞を読み解いていきます。
『アイドル領域Vol.3』後半は、アイドル現象の再帰性(=アイドルがアイドルに関する新たな情報によってその営みを不断に変化させていき、その結果アイドルというものの意味・性質が問い直されていく動態)について扱った文章を中心に構成されています。アイドル演劇、アイドルのドキュメンタリー映画、テレビのバラエティ番組から生まれた恵比寿マスカッツというアイドルグループ、AKB48のパロディとしてのアイドルなどを扱っています。
最後に、AKB48のCGアイドル江口愛実をめぐる現象や、現代のアイドルに関するトピックを広く扱った座談会を収録しています。
アイドルファンのみならず、現代の文化事象一般に興味のある方にお勧めの一冊です。



アイドル領域Vol.4

アイドル領域Vol.4

アイドル領域Vol.4
特集:ユビキタス アイドル
「いつでも・どこでも・だれでも」アイドルに触れることができ、またアイドルになれる時代。
アイドルやファンのメディア利用の新しい局面、アイドルブームに地方アイドルの乱立、誰もが参入するアイドル語り…。
アイドルに関する「いつでも・どこでも・だれでも」の状況について、どういった条件がそれを可能にしているのか、それは具体的にどういう状況なのか、それにともなってどのような問題が引き起こされているのか、そのような中でアイドル現象はどこへ向かうのか、といった問題意識の下、論考とコラムを集めています。
アイドルファンのみならず、現代の文化事象一般に興味のある方にお勧めの一冊です。



アイドル領域Vol.5

アイドル領域Vol.5

アイドル領域Vol.5
特集:メディア/アイドル
アイドルが何によって、どのような場において伝達・表現されるのかという点において、改めてメディアとアイドルの相互作用、共犯関係というものをとらえ直したいという意図から、この特集を組みました。雑誌・小説・テレビ・映画・インターネット・演劇、また映画館や劇場、さらには地方という「場所」…。何を媒介にしてアイドルが表現され、またそこにおいてアイドルがどのように受容・消費され、どのような意味を帯びているのか。様々なメディア上で、具体的な個々のアイドルが登場する場合もあれば、作品という形で抽象概念としてのアイドルが表現される場合もあるでしょう。いずれにしても、あらゆる形式をとって、世の中にはアイドルイメージがあふれています。「メディア」というと、しばしば最先端の情報技術にばかり目を向けがちですが、それにとどまらず、様々なアイドルの伝達形式に着目することで見えてくるものはないか、探求していきたいという意図を込めた特集です。
『アイドル領域Vol.5』、前半は抽象的なアイドルやファンなるものについて、雑誌や小説や舞台から読み解いていきます。後半は、具体的なアイドルの現場に即した文章が並びます。
アイドルファンのみならず、現代の文化事象一般に興味のある方にお勧めの一冊です。



斧屋のアイドル-宗教論

斧屋のアイドル-宗教論

(新刊)斧屋のアイドル−宗教論
アイドル評論家の斧屋による、アイドルと宗教にまつわる論集。アイドルという現象に興味のある方、また「アイドル」や若者向けポップカルチャーをテーマにレポート、卒論を書こうと思っている方にぜひ読んでいただきたい一冊です。


巻頭には、2004年度東京大学文学部卒業論文である「アイドル「オタク」の宗教性」を収録。モーニング娘。を中心とするハロプロのアイドルオタクを調査することで、現代の若者の宗教性に迫ります。
現在、大多数の日本人が自分は「無宗教」であるという意識を持つ一方で、組織としての宗教から離れた、個として宗教性にアプローチする動きが様々に見られています。こうした中で、「オタク」に現代特有の宗教性を見出すことができるのではないかという問題意識のもと、「モーニング娘。オタク(通称モーヲタ)」と言われる人々へのインタビュー調査や、現場やネット(主に2ちゃんねる)での様々な文化現象の観察を通じて考察を行っています。
アイドル(idol)はもともと宗教的な言葉ですが、それゆえに「アイドル=宗教」論は俗な言説にとどまってきました。この論文は従来の俗な「アイドル=宗教」論を超えた現代の宗教性にたどり着くことを目指しています。
ヲタ芸」や「「石川ってウンコするの?」スレ」といった特徴的なファン文化の具体的事例をもとに、1980年代以降のオタク文化論を援用しながらアイドルオタクの宗教性に迫っていきます。


卒論執筆当時はまだAKB48も存在せず、今(2013年)のようなアイドルブームも想像できませんでした。この論文は当時のハロプロのファンについて分析したものですが、現在相変わらずの「アイドルは宗教」的物言いがあふれる中で、いま一度自分の思考の跡を世に問うてみようと考えました。また、その後批評誌やブログで発表してきた文章も含めて、「アイドル―宗教論集」としてひとつにまとめておこうとも思いました。
もしアイドルを語るにあたって、「宗教」という言葉のバイアスが強すぎると感じられるならば、「信じる」という言葉について考えたい(考えてほしい)と思います。アイドルを信じるとはどのようなことか。何かを信じることが極めて困難になっている現代において、この問いは、もはやアイドルファンだけのものではないでしょう。
アイドルとは何か、あるいはそこから話を広げて、現代におけるコミュニケーションの可能性とはということについて、何がしかの思考の材料となれば幸いです。