いちごを売るアイドル

以下のイベントに行ってきました。



いちごの産地からやってきたご当地アイドルによるいちご即売会&PRイベント〜〜『いちご主産9県プレゼンツとちおとめ25・LinQ・いちご物販フェア2013』〜〜http://news.livedoor.com/article/detail/7314695/
以下は上記リンク内のイベント詳細の引用。


■イベント詳細
【日程】 2013年1月17日(木) ※プレス受付開始11時〜
【時間】 
フォトセッション  11:30〜12:00、18:00〜18:30
物販         12:00〜19:00予定 (900セット完売次第、終了)
ライブステージ  12:30、13:30、15:00、17:00、19:00の計5回(1ステージ30分)

いちごPRのMC、とちおとめ25・LinQ共に2曲ずつのライブ予定

【場所】 
秋葉原「ネ申タワー」
東京都千代田区外神田1-9-11
(JR秋葉原駅 電気街口より徒歩2分)
(1階 物販コーナー 3階 PRイベント会場 )

【主催】 
いちご主産県情報交換会
※JA全農みやぎ、JA全農いばらき、JA全農とちぎ、JA静岡経済連、JAあいち経済連
JA全農ふくれん、JAさが、JA全農ながさき、JA熊本経済連

【ゲスト】「とちおとめ25」 「LinQ

【特典】 1500円のいちごアソートケース購入者には以下のどれかを選べる特典有り
○とちおとめ25 or LinQとの握手 ※握手メンバーは選べません。
○とちおとめ25・LinQいちごPR限定ライブステージ観覧 ※先着300名(1ステージ60名)
○限定プレミア・チェキプレゼント ※先着300名
(とちおとめ25・LinQ各1名ずつ2人1組のイベント限定チェキ) 
※ 特典としてチェキは先着で選べますが、チェキの内容自体は選べず、中身はお楽しみです。
※ また、購入者とのツーショットではございません。





さて、簡単に感想を。
自分は17時からのライブを見た。神タワーの外でJAの人たち?が呼び込みをしていて、なんだか奇妙だった。1500円で商品引換券を買い、ライブを見て、帰りにいちごを受け取って帰るという、不思議なイベント(これ別に高くないイベントだよね)。平日17時前から会場に来れる人は限られているのだけど、それでもだいぶとちおとめヲタが来ていて、狭い会場に50人弱くらいは客がいた。ライブはとちおとめ25とLinQが2曲ずつ。とちおとめの「いちごハカセ」、初めて聞いた、とても好みの曲。そして鉄板の「いちごパフェ」。奇しくもどちらも歌詞の中に「いちごパフェ」が出てきてパフェ評論家としても胸震える曲(でも結局今日はパフェ食べませんでした)。LinQは「CHIKU-TAKU」「for you」、しばらくLinQをチェックしてなかったですが、あいかわらず雰囲気いいなあ。



アイドルがいちごを売る。いちご購入者に特典有りとあるが、当然この場合みんな特典目当てでいちごを買うのだから、つまりアイドルがいちごを売っていることになる。ここでぼくは、どうしてもりんご娘のことを思い出す。アイドル批評誌『アイドル領域Vol.4』所収の「地方アイドル論」でも扱ったが、自分の観覧した首都圏のイベントにおいて、青森のアイドル「りんご娘」は、CDも売らず接触イベントもせず、ただ青森のアピールをし、りんごを売っていた。
前述の批評誌において、ぼくはLinQを地方色を打ち出さずに、「アイドルの魅力によって地元に来てもらう」という側面にスポットを当てて論じた。しかし今日のイベントはJA主催であり、地方特産品としてのいちごを売るものだった。もちろん、地方アイドルはどこも、地元の魅力を知ってもらうことと、アイドルそのものの魅力をアピールすることをそれぞれのバランスで行っているのだから、今回のLinQの活動は十分に地方アイドルとして想定されるものではある。
さて、ここで考えたいのは、アイドルが何を売るかということについてである。強調したいのは、周知の通り、やはり今、複製できないものを売る方向性が顕著であるということだ。CD(楽曲はデータとして複製可)に握手(複製不可な体験)がつくことを筆頭に、ライブ・接触イベントという体験の一回性を売りとして、アイドル現象が隆盛を迎えている。何度も論じているように、視覚・聴覚に訴える表象は複製しやすいのに対し、触覚・嗅覚・味覚に訴える表象は複製がしづらい。であるならば、一回性の体験として、食物を提供し、嗅覚・味覚をも含めた五感に訴える方策は、アイドルのビジネスの一つの方向として正しいと思える。地方アイドルに限らず、アイドルが作った手料理を食べることのできるイベント(Jewel Kiss)や、ライブ会場で野菜を売る(ハロプロのライブ会場でアイドルが野菜を売る)といった興味深い動きもある(参考:中野サンプラザで野菜を売る宮本佳林ちゃんさんhttp://www.iamyourenemy.co.uk/whg/2012/08/post_2440.html、あるいは五感に訴えるという点については、先日のバナナ学園のレポも参照のこと。)
CDや書籍の複数枚購入が批判の対象になるならば、批判されない形で消費できてしまう食物を売ってしまえばいい。食べきれないものを大量に販売してしまうと問題になりそうだが、データとして複製可能と思われる商品を扱うよりもよほど非難を回避できる方策のように思う。(果たして今日の5回のイベントをコンプリートしたヲタは、ちゃんといちごをおいしくいただいているだろうか。イベント後に誰かの家でいちごパーティーとか、すごい楽しそう。逆に悪い歴史としては、仮面ライダーチップスとか、ビックリマンチョコの事例もあるけれど。)
もちろん、これらのイベントでアイドルにもたらされる利益などほとんどないも同然だろうが、とはいえこうした複製の難しいものを売る新しい試みには注目したい。(いや別に新しくもないことかもしれない。言ってみればアイドルはタバコ屋の看板娘みたいなものである。)ともあれ、アイドルの安定的継続が決して簡単ではないことが徐々に明白になってきた今のアイドルブームの中で、どうやってマネタイズをし、どのようにできるだけ健全なアイドル産業を構築していくかということについては興味深い。以下のイベントがそのヒントとなる場であればと願う。


新宿ロフト 1月28日(月)21:15スタート
<アイドルビジネス論2013・吉田豪 × JJ 小野 〜LinQモデルにみる現代のアイドルビジネス徹底解剖!〜>
http://www.loft-prj.co.jp/LOFT/schedule/loft.cgi



御託はともかく、しばらく毎日いちごの食べ比べを楽しめそうです。



地方アイドル論の参考文献として以下を是非どうぞ。

アイドル領域Vol.4

アイドル領域Vol.4

アイドル領域Vol.5

アイドル領域Vol.5