AKBN0 7thライブ 〜聖地・赤羽会館 第二幕 1期生3名引退&セカンドシングル発表スペシャル〜

AKBN0のライブに行ってきた感想を書こうと思う。時間がないのであまり深い考察はできそうにない。
ともかく今回は、1期生として中心メンバーとしてやってきた3名の引退ということで、会場がどんな雰囲気になるかという関心のもとで会場に向かった。
赤羽会館は満席ではなかったものの、全然ガラガラといった感じでなく、割と後方まで客が入っていた。前方のブロックでは、女性の比率が20%弱ほどいて驚いた。
ステージのセットにも少しお金が掛けられてきたという印象。
自分が2階席にいたからか、ライブ中、いつもの「治安の悪さ」を感じなかったような気がする。とはいえ、メンバーのMC中も叫び声がうるさいといういつもの状態は続いている。
メンバーの自己紹介は客席のレスポンスを導くもので、割とおなじみのものとなっている。元ハロプロエッグの前田クローバー彩里は、「楽しんご」の「どどすこ…」をひとしきりやったあとで「いろりんビーム」を出すのだが、そのハイテンションぶりには不安になる、とともに、ハロプロエッグの時より出番も多くて生き生きと楽しげにやっているのを見ると複雑な気持ちになる。
AKBN0は以前に見たときよりも、格段にダンスの質が上がっているように見えた。立ち位置も頻繁に入れ替わり、グループアイドルの特長であるフォーメーション美というのもそれなりに。学芸会の域からは脱して、アイドルとして割と素直に享受できるというレベルに思えた。
ところで、自分の横には運動系の部活からの帰りと思しきごつい高校生が一人で座っていて、曲中遠慮がちにケチャをしていた。おそらくAKBのファンだとは思うが、やはり中高生のアイドルファンは増えているのだろうなあと思う。
AKBN5期生の前田と「大隅トゥインクルりよん」が「好きな先輩」を歌ったのには高まった。モーニング娘。5期メンバーの曲を、元ハロプロエッグの前田が歌うことになるとは。前田はMCでもモーニング娘。高橋愛とのエピソードを披露するなど、元ハロプロエッグであったことを全く隠さない。
そういえば、MCではどのアイドルが好きという話が多くでたように思う。アイドルが他のアイドルのことを楽しげに語る、というのはハロプロをずっと見てきた者からすると新鮮なのだが、ここ最近どのアイドルでも割と顕著に見られる。
ライブ中盤、℃-uteの「まっさらブルージーンズ」と「Danceでバコーン!」を歌ったが、これらの曲を知っているファンが多分半分くらいで、客席のノリの統一感がない。確かに、ハロプロの曲はライブでのノリ方を学んでいかなくてはならないことが多いという点で、ハイコンテクストとは言えるかもしれない。もともとAKBNの客はAKB流れが多く、AKBの曲のノリ方は知っている客が多いことと、AKBの曲は多くが統一的な型(MIXなど)で楽しめるように思われ、これらのことからAKBN現場ではAKBの曲の方が歓迎されている空気がある。特に「Danceでバコーン!」は客席の声が小さいと非常にしょぼく感じてしまう。これは仕方がないけれども。


さて、ライブのクライマックス、1期生3名の引退式について。
メンバー一人一人に対して、一番親しかったり関係性の深いメンバーからのメッセージが読まれる。同じ地方組で頑張ったねとか、これからはただの友達として仲良くしよう、など。しかし感じるのは、ステージ上と客席との温度差である。正直、会場全体に悲壮感を感じないし、「卒業コンサート」というものに特有の、会場全体が一点を集中して見つめているという張り詰めた感じが、全く会場にない。なにか注意力が拡散していく感覚。もちろんこの引退を悲しく思い、その場で涙したファンもいたではあろう、が、それは会場の空気全体を支配するものではなかった。
引退する高橋キャサリン玲海からのメッセージが興味深い。覚えている限りで記してみる。
「AKBN0の売上げ至上主義は、私が想像していたよりも露骨過ぎました。…私と会って話すには、最低1000円はかかります。1月のおこづかいが1000円の自分にとって、それは大金でした。歌も踊りもできない私にそんなに価値はない。みんなにお金を使ってほしくないと思っていた。…アイドルは歌って踊るものではないのか。…会社からはAKBN0を一番に考えてくれと言われましたが、N0を一番に考えられなくなった。…クライアント様(ファン)はかけがえのない存在でした。…たくさんの思い出、ありがとう。…」
このメッセージは自分にとても「リアル」に思えて、心を打つものがあった。
引退する3名は、それぞれモデルやら、女優やら、会計士やらという別の夢に向かって歩き出すという。なんというか、自分はこれをとてもいいと思うのだ。アイドルから簡単に離脱できるという状態が、とてもいい。彼女たちの言葉の中に、何回か「いい思い出」という言葉が出てきたのが印象的だ。青春の一時、同じアイドルになりたいという夢をもった仲間たちと切磋琢磨してイベントやライブを行い、そしてそこから本当の自分の夢に向かって新たに旅立っていく。これでいいんじゃないかと思えてくる。もちろん、そのアイドルの行うイベント内容の是非を問う議論はあってもいい(デートイベントってどーなのよ、とか)。ただ、だからといって彼女たちは、これから黒い歴史を背負って生きていくのではないだろう。「いい思い出」として残り続けるのではないか?(まあそれぞれのメンバーの辞め方とかにもよるだろうけど。)十数年後、「昔ちょっとだけアイドルやってたことがあるのよ」と少し恥ずかしげに子供に語る母親って、別に悪くないなあと思う。
ほとんど過剰なまでにポジティブに語ってしまったが、引退式の後には息もつかせず新メンバー6期生の品評会が行われた。これは本当にAKBNらしいと思う。メンバーが代替可能なことを明らかにして、もうファンの目線を新メンバーに向けさせようとする。実際、もはや会場に引退式を引きずる雰囲気が残っているようには思えなかった。6期の候補生は、どちらも自己紹介やらダンスやら、手馴れた感じで、とても素人とは思えない。なぜAKBNなんかにこんな有能そうな子が来るのだろうかとも思うのだが、実はAKBNというグループってそれなりに認知されてきているのでは、と思うと少し恐ろしい。
ライブの最後は「アイドルバカ一代」という替え歌である。なぜかバナナを振って歌うことになっている。「アイドル一代 誓った日から 命も捨てた 名もいらぬ」…、しかし、むしろAKBNは「アイドル一代」を誓わなくてよいアイドルである。そう感じる。「芸能人」として生きなくても、割と容易にアイドルになれ、そしてアイドルをやめられる。これは他の多くの「ライブアイドル」も同様である。そういったアマチュアアイドルの乱立は、質の低下という非難はあるだろうが、決して悪いこととは思わない。
最後のメンバーのMC。歌とダンスのメンバー内ランキングが最下位となり、罰として個人の売上げを相当額没収となった「茜チュインあい」は、「初めは売上げ至上主義だったのに、だんだん複雑になってきちゃって…」と、不満な様子であった。チュインは売上げでは上位につけているメンバーだが、ダンスと歌は苦手である。チュインにとっての「アイドルらしさ」は、ファンがつき、売上げが上がることだ。先述の引退する高橋キャサリン玲海にとっては、「歌って踊る」のが「アイドルらしさ」だ。こんなところでも「アイドルらしさ」をめぐる闘争は繰り広げられている。運営はそうしたメンバーの意向、ファンの動静を見ながら、AKBNとしての「アイドルらしさ」を創り出していくしかないのだ。


終わってみて戸惑うのは、AKBNが、AKBNとしての貫禄を持ち始めたように思えることだ。別にファンは多くないし、会場の統一感もない。けれどもなにか、独特の魅力がある。この現場、もういいや、と思えない。