桜組2期生 秋葉原Live 3月5日(土)

レポをあげないでいるうちに、とんでもないことになってしまいましたが、桜組のライブについていまさら書きます。
3月5日(土)、桜組秋葉原Live、秋葉原野外特設ステージ(JR秋葉原駅 電気街口徒歩1分中央通り角)にて。
桜組は、結成当初は中国人メンバーが中心であったが、昨年春に2期生を募集、夏から活動をしている模様。その後も様々な紆余曲折を経て、昨年の2期生エスケープ事件などを一応乗り越えながら活動を続けている、「忍者」がコンセプトのアイドルです。詳しくは、「みんなのくますぽ」さんのブログに詳しい。
http://s2no.ldblog.jp/archives/cat_95714.html(動画も数多く閲覧可能)
ドロドロしたアイドルの世界、という印象はどうしてもぬぐえないが、AKBN0の件と同様、こうした生々しさの中にもアイドルの真実はあろうということで、完全に興味本位でライブに行くことにした。
実際に見てみての印象は、良くも悪くも西山会長の趣味がそのまま出ているんだなあ、ということだった(桜組をプロデュースしている西山由之氏は株式会社ナックの会長、経団連理事を務める富豪だ)。当日のライブ進行を振り返ってみたい。


会場は秋葉原駅近く、電気街口から中央通りに出るその角の空き地に桜組のバスが止められ、ステージが作られている。椅子が50席ほど並べられ、その後ろに立見客。会場周囲は紅白の幕によって囲まれている。人通りが激しいため、興味本位で通行客が立見客となって後ろから押し寄せる。ライブは午後6時から8時まで1時間単位で2ステージということで、自分は6時ちょうどくらいに会場についたが、すでに会場スペースはいっぱいになっており、立見スペースの後方で背伸びをしてステージをうかがった。観客は150〜200名。常連は30から50といったところ。
開演。西山会長とタレント佐野美和によるMC。西山会長が好き勝手しゃべりすぎるため、長い。この段階で興味本位の立見客は飽きたと思われる(もう一つ言うなら、しゃべりが時代がかっていて、いかにも演歌が始まりますといったMCなので、それがアイドル現場とまったくそぐわない。昨年鶯谷で見た地下アイドルイベントの司会を思い出した。http://d.hatena.ne.jp/onoya/20101013)。そして一曲目、「緋ぼたん桜」という演歌から始まった時、立見客がかなり帰り始める。立見客をファンとして取り込みたいなら、これはセットリストの組み方が悪いのではないかと思わざるをえない。続いても「津軽にござんす」という演歌。これによって、だいぶ自分は前の方に進むことができ、見晴らしがよくなった。(参考http://www.youtube.com/watch?v=4XpSd_SwEwc
会長が言い残したことがあるということで、再びMC。3月11日に会長の会社の研修があり、同時に桜組のディナーショーがあるから、そこでヲタ芸を披露してくれるファンを募集とのこと。日当2000円と交通費も出す、と言っていたが、果たしてどうだったのだろうか(地震当日だったが、いったいどうなったのか)。
続いて、メイドの衣装、背中には刀を差した異様な格好で桜組登場。「あきばのくのいち」、「くのいちラブ」、「忍法愛のトラップ」、「キュンキュンくのいち」とメイドをコンセプトにした曲が並ぶ(参考http://www.youtube.com/watch?v=tGql9j1Wel0)。「メイドは世を忍ぶ仮の姿、本職は忍者、現実は学生」だそうです。歌詞の中で修行修行歌っているけど、学生が奇妙奇天烈な格好させられて人前で歌うことこそ修行だと思う。忍者がメイドに化けているという無理やりな設定、これ自体はぼくは好きです。
しかしとにかくダメなのは、世界観の作り方に失敗しているように思えること。まず西山会長の作る歌詞(ちなみに歌詞は全て西山会長によるものらしい)の想像力が貧困だ。実際に動画で上記の曲を聞いてもらえば分かるが、ほとんど「ご主人様」と言わせておけばいいんだろうという程度の意図しか伝わってこない。メイドがどういうものか、メイドに萌えるということがどういうものかを外部の視点からなんとなくなぞってみた、という風にしか見えない。作詞者本人が、オタク的価値観やファン目線というものを理解できていない。だから、忍者がメイドに化けているという設定の面白さが生きていないように思える(逆にコンセプトをうまく生かしているという点では、ぼくは「セクシーオールシスターズ」はとてもよい仕事をしていると思える。現在活動休止中ですが。)。二つ目に、アレンジがダサいこと。音楽については語る知識も経験もないのだけれど、昔のアイドルソングのように仕上げてみました、という感じ。
とにかく、久しぶりに、見ていていたたまれないアイドルを見た。逆に言えば、そういう意味では気になってしまうアイドルなのかもしれない。かわいそうで応援したくなるのかもしれない。



「くのいち忍者隊」、「忍者体操」、「忍者のチャチャチャ」と続く。思ったが、歌詞で「ござる」とか「ござんす」とか言われても、全然萌えない。そういう意味でも、西山会長は分かっていないように思う。「ごじゃる」あたりにしておけばいいのに、そういうリテラシーはない模様。
ライブ中にファンはどうしているかというと、着座しているファンはさほど動かない。歓声を浴びせるファンはいる。椅子の左側のスペースで、ここは常連ファンのスペースなのか、我が物顔でヲタ芸やコールを入れるファンが10名ほど。しかし曲が必ずしもMIXを入れられなかったり、コールを入れやすくなっていないので、ライブ全体がうまく盛り上がるという気もしない。それでもファンは独自にコールを入れようと頑張っている。
アラブシリーズ3曲「魔法のじゅうたん」、「アラブのくのいち」、「恋のランプ」(http://www.youtube.com/watch?v=Y6YHAqnR9dA)。アラビアンナイフ?を背中に差して、アラブ風の衣装に身を包む。「わたしたち アラブのお姫様 実は変装したアラブの忍者です♪」うーん、まんまなんだよなあ。
「空飛ぶ忍者」、「忍者でござる」、「旋風忍者」、「くのいちサッカー」(「くのいちサッカー」参考http://www.youtube.com/watch?v=o0csnd8B5KA)。ピンクレディーを思わせる曲もある。しかし「くのいちサッカー」、「サッカー」なのに「ノックアウト」という歌詞が出てくるなど、やはり歌詞にいまひとつ釈然としないものを感じる。MIXが入る曲もあるのだが、人数不足で迫力がない。
以上、6時からと7時からで同じセットリストのライブを2回見た。1回目は立見、2回目は着座で。2度目のみアンコールで「くのいちサッカー」をもう一度歌う。ライブ後に物販があったようだが、屋外でかなり寒かったので早々と会場を去った。



感じた問題点2つ。西山会長の趣味で作ったようなアイドルだが、書いてきたように、設定を生かすだけの世界観の構築に失敗している。歌詞、曲、アイドルの見せ方。西山会長がよいと思ってやっていることがひとりよがりのような気がどうしてもしてしまう。ファンがついているのはただただメンバーの魅力によるものではないか。メンバーは確かに頑張っている。寒空の中、あられもない衣装で元気一杯頑張っているのを見ると、応援したくなる。しかしそれ以上の魅力があるかと言われると、なかなか難しい。メンバーの歌やダンスが下手であることは問題ではない。プロデュースする側が、どういうアイドル像を目指して、どうアイドルを見せていって、どういうファンを獲得したいか、どの程度の規模の人気を獲得したいかが見えないのだ。桜組は当初紅白を目指すということだったようだが、いまもそれを目指しているか知らないけれど、現状では少数の固定客相手の商売にならざるを得ないし、ビジネスとしては成り立ちそうにない。(実際、現状のライブは毎度赤字の模様。)
ところで、昨年熱海の「熱海秘宝館」に行ったのだが、個人の趣味嗜好を無理やり押し付けられるようで大変不快な施設であった(簡単に言うと、作り手が面白いと思い込んでいるオヤジギャグを、こちらが高い金を払って延々聞かされつづける体験だった)。大げさに言えば桜組もそんな感じで、会長の趣味によるアイドルというのを、もう少し整えてファンの前に出してほしいという感想を持たざるをえなかった。
問題点2つ目。これも会長の無理解によるものだと思うが、ファンを買いかぶりすぎている。あまりにも性善説に立ち過ぎていると言うか。ライブ途中のMCで、会長は常連のファンに名指しをして会話をしていたし、ヲタ芸要員を熱海に呼ぼうともしていたし、過去のイベントではメンバーの大学名を晒したりもしている。ファンの暗黒面についての認識が果たしてあるのだろうか。桜組の常連ファンの一部はかなり若い。西山会長はファンのことを、場を盛り上げて応援してくれる(基本的には)いい人たち、と認識しているように見えたが、プロデュースする側がある特定のファンを優遇しているかのように見えることは良くないように思うし、過去にもファンとメンバーがつながってしまう不祥事の噂はあるようだから、ファンをどうコントロールするかは重要なはずだ。しかし少なくともアイドルの現場において、西山会長よりも若いファンたちのほうが賢いように見えた。
簡単にまとめると、アイドルの世界があまり分かっていない(という言い方が曖昧なら、アイドル現場やアイドルのメディア経験が少ない)プロデューサーがアイドルビジネスに手を出してもうまくは行かないのではないか、と思った。
正直設定はとても面白いし、メンバーの中にはとても魅力あるかわいいメンバーもいるので、見せ方ひとつでもっと人気は出ると思うのだが。ちなみに推すとしたら、桜りのさんです。(全てのメンバーの苗字が「桜」というのはどうかと思う。メンバーの名前が覚えられにくくなってしまうのではないか。実際、ぼくは何度も自己紹介を聞いたのに、全く名前を覚えられませんでした。)